2025/12/23
1on1ミーティング
1on1の組み合わせ変更は認めるべきか? 人事が押さえるべき判断基準

1on1ミーティングを導入・定着させていく中で、
人事や1on1推進担当者が、必ず直面する問いがあります。
「上司と部下の関係性が悪く、
1on1を続けること自体が強いストレスになっていると言われている。
この場合、1on1の組み合わせ変更は認めるべきなのか?」
この問いは、単なる運用論ではありません。
制度をどう守るかと同時に、人をどう守るかが問われるテーマです。
1on1は「関係性向上」のための制度である
まず、前提として押さえておくべきことがあります。
1on1の導入目的の一つは、
上司と部下の関係性を向上させることです。
その意味では、
「関係性が悪いから1on1をやらない」
「やりづらいから相手を変える」
という判断は、
制度の目的から見れば本末転倒に映るのも事実です。
実際、1on1を継続する中で、
- 最初は話せなかったが、徐々に関係性が改善した
- 誤解が解け、信頼が生まれた
というケースがあることも、私たちは数多く見てきました。
しかし、制度には「人を守る責任」もある
一方で、人事として決して軽視してはならない視点があります。
それは、
1on1が、特定の個人にとって強い精神的ストレス源になっている場合に、
どう扱うのか、という問題です。
たとえば、
- 1on1の前日から体調不良や不眠が続く
- 強い不安や緊張で、業務パフォーマンスが著しく低下する
- 1on1後に、自己否定感や無力感が増幅してしまう
このような状態が明確に見られる場合、
「制度だから」「関係性向上のためだから」という理由だけで
継続を強いることは、適切な人事対応とは言えません。
1on1は、
人を支えるための制度であるはずです。
判断軸は「関係性」だけでは足りない
ここで、人事が陥りやすい落とし穴があります。
- 関係性を良くしたい → 続けるべき
- 関係性が悪い → 組み合わせを変えるべき
という単純な二択で考えてしまうことです。
しかし、実際に見るべき判断軸は、次の二つです。
- 1on1という対話の場が機能しているか
- 特定の個人に過度な心理的・精神的負荷がかかっていないか
この二つは、どちらか一方では不十分です。
両方を同時に満たすことが、健全な制度運用です。
人事が押さえるべき「組み合わせ変更」の判断基準
感情論や場当たり的判断を避けるために、
組み合わせ変更は、一定条件下での選択肢として明示します。
たとえば、次のような基準です。
- 3か月間、1on1を継続して実施している
- メンティの1on1満足度が、5点満点中、平均2.0未満で推移している
- 関係性改善に向けた工夫や支援を行っても、改善が見られない
- 本人から、強い精神的負担を示す具体的なサインが確認されている
ここで重要なのは、
「つらいと言ったから即変更」でも、
「制度だから我慢」でもない、という点です。
一定期間・一定基準をもとに、
人と制度の両方を守るための判断を行います。
組み合わせ変更は「保護」であり「否定」ではない
組み合わせ変更を行う際、
人事が最も注意すべきは、その位置づけです。
これは、
- 上司のマネジメント能力を否定するものではない
- 人間性や相性の優劣を示すものではない
- 制度の失敗を認めることでもない
同時に、
- 強いストレスを抱えている個人を一時的に保護する措置
- 1on1という制度そのものを守るための調整
でもあります。
業務指示・評価・責任関係は、
これまで通り直属上司が担う、という整理も不可欠です。
上司への説明では「個人保護」の視点を正しく伝える
組み合わせ変更の説明を誤ると、
上司は「自分が否定された」「評価された」と受け止めてしまいます。
説明の軸は、次の三点に置きます。
- 制度運用上の判断であること
- 一時的な調整であること
- 本人の心身の負担を考慮した保護的措置であること
| < 説明例 > 1on1は関係性向上を目的とした制度ですが、 実際の運用では、すべての組み合わせで同じように機能するとは限りません。 今回は、一定期間の実施状況と満足度に加え、 本人にかかっている心理的負担も考慮した結果、 一時的な運用調整が必要と判断しました。 これはマネジメント評価や責任の問題ではなく、 制度と個人の双方を守るための判断です。 |
「保護」で終わらせず、「支援」につなげる
個人を守る対応は、
上司を切り離すこととイコールではありません。
上司が希望した場合には、
- 1on1に関する研修
- フィードバックや振り返りを含む個別支援
といった支援策を用意します。
これにより、
- 「外された」
- 「問題があると判断された」
という受け止めを、
「支援を受けられる」「学び直せる」文脈へ転換できます。
まとめ:制度を守るとは、人を守ることでもある
- 1on1は関係性向上のための制度
- しかし、強いストレスを抱える個人を放置する制度は、健全とは言えない
- 人事の役割は、「続ける/変える」を感情で決めることではない
- 制度と人の両方を守る判断基準を持つこと
1on1が文化として根づくかどうかは、
「うまくいかないケース」にどう向き合うかで決まります。
制度を守るために人を犠牲にしない。
人を守るために制度を壊さない。
その両立を目指す姿勢こそが、
1on1を“成熟した取り組み”へと導いていくのだと、私たちは考えています。


