2026/06/01
1on1ミーティング
1on1が形骸化している会社で起きていること ― 人事が最初に見直すべき3つの視点 ―
- 1on1が形骸化している会社で起きやすい状態
- 実施率だけでは見えない1on1の課題
- 人事が最初に見直すべき3つの視点
- 1on1を立て直すための現状把握のポイント
1on1ミーティングを導入する企業は増えています。
上司と部下が定期的に対話する機会をつくり、相互理解や部下の成長支援、エンゲージメント向上につなげたい。そうした目的で、1on1制度を整えた企業も多いのではないでしょうか。
「1on1は実施しているが、効果が見えない」
「現場では予定どおり行われているはずだが、何が話されているのか分からない」
「管理職によって進め方に大きな差がある」
「部下から見ると、ただの業務確認の時間になっているようだ」
このような状態は、1on1という仕組みそのものが間違っているということではありません。
制度としては導入されているものの、現場での目的や進め方が曖昧なまま運用されていると、1on1は形骸化しやすくなります。
1on1を見直す際に大切なのは、最初から「研修を増やす」「マニュアルを作り直す」「実施率を上げる」といった打ち手に進まないことです。
まず必要なのは、自社の1on1で実際に何が起きているのかを、人事として冷静に把握することです。
1on1の問題は「やっているか」だけでは見えない
1on1施策を確認するとき、多くの企業がまず見るのは実施率です。
もちろん、定期的に実施されているかどうかは重要です。そもそも実施されていなければ、1on1は機能しません。
しかし、実施率が高いからといって、1on1がうまく機能しているとは限りません。
- 予定表上は毎月実施されている
- 上司も部下も「やっています」と回答している
- 実施記録も残っている
それでも、実際には業務の進捗確認だけで終わっていたり、上司からの指示やアドバイスが中心になっていたり、部下が本音を話せていなかったりすることがあります。
この状態では、1on1は「実施されている」が、「機能している」とは言い切れません。
人事が見るべきなのは、1on1が予定どおり行われているかだけではありません。
その時間が、部下の成長支援や関係性の質の向上にどうつながっているのか。あるいは、つながっていないとすれば、どこで止まっているのか。
この視点を持つことが、1on1の立て直しの出発点になります。
形骸化している1on1に見られる状態
1on1が形骸化しているとき、現場ではいくつかの典型的な状態が見られます。
話しやすい時間にはなっているが、成長や行動につながる対話になっていない。
日常の業務確認だけで終わり、部下の内面や成長課題に踏み込めていない。
上司が話題を決め、助言し、結論を出すため、部下が受け身になっている。
回数や記録の管理が中心になり、1on1の本来の目的が見えにくくなっている。
1. 雑談で終わっている
一つ目は、雑談で終わっている状態です。
雑談そのものが悪いわけではありません。安心して話せる関係をつくるうえで、雑談は大切な要素です。
ただし、毎回の1on1が近況確認や世間話だけで終わり、仕事上の困りごと、成長課題、キャリア、チームでの関係性などに踏み込めていない場合は注意が必要です。
「話しやすい時間」にはなっている。けれども、「成長や行動につながる対話の時間」にはなっていない。
この状態は、1on1の形骸化の一つです。
2. 業務進捗確認になっている
二つ目は、業務進捗確認になっている状態です。
「今どこまで進んでいるか」「問題はないか」「次は何をするのか」。
こうした確認は、日常のマネジメントにおいて必要です。
しかし、それだけで終わってしまうと、1on1は通常の業務ミーティングと変わらなくなります。
本来の1on1では、業務の話を入り口にしながらも、部下が何に迷っているのか、何を学んでいるのか、どのような支援を必要としているのかを扱うことが重要です。
3. 上司主導になっている
三つ目は、上司主導になっている状態です。
上司が話題を決め、質問し、助言し、結論を出す。こうした進め方が続くと、部下は「聞かれたことに答える人」になりやすくなります。
上司は一生懸命関わっているつもりでも、部下から見ると「指導される時間」「上司の考えを聞く時間」と受け止められていることがあります。
もちろん、上司の助言が必要な場面もあります。
ただし、毎回の1on1が上司主導で進むと、部下が自分の考えを整理したり、自分からテーマを持ち込んだりする機会が少なくなります。
結果として、1on1は対話ではなく、上司から部下への一方向のコミュニケーションに近づいていきます。
4. 実施すること自体が目的になっている
四つ目は、実施すること自体が目的になっている状態です。
制度導入後、しばらく経つと「月1回実施する」「記録を残す」「未実施を減らす」といった運用管理が中心になることがあります。
もちろん、継続的に実施するための管理は必要です。
しかし、実施回数や入力状況だけが注目されると、現場では「やらなければならないからやる」という意識が強くなります。
その結果、上司も部下も、1on1の目的を考えるよりも、予定を消化することを優先してしまいます。
1on1は、実施した事実だけで価値が生まれるものではありません。
- その時間を通じて、どのような理解が深まったのか
- どのような支援につながったのか
- 部下にとって、次の行動や成長に結びついたのか
この点が見えなくなると、1on1は制度としては残っていても、実質的には形骸化していきます。
人事が最初に見直すべき3つの視点
1on1が形骸化していると感じたとき、人事はどこから見直せばよいのでしょうか。
最初に確認したい視点は3つあります。
1on1の目的が、現場の管理職や部下にとって分かる言葉で共有されているか。
実施率だけでなく、現場でどのような1on1が行われているかを把握しているか。
管理職を責めるのではなく、継続・改善を支える設計になっているか。
1つ目:目的が現場の言葉で共有されているか
まず確認したいのは、1on1の目的が、現場の管理職や部下にとって分かる言葉で共有されているかどうかです。
- 自社における1on1は、何を目指すものなのか
- 評価面談や業務ミーティングとは何が違うのか
- 管理職は1on1で、どのような関わりを期待されているのか
- 部下はどのような姿勢で参加すればよいのか
ここが明確でないまま始まると、現場ではそれぞれの解釈で1on1が行われます。
ある管理職は雑談の場と捉え、別の管理職は進捗確認の場と捉え、また別の管理職は指導の場と捉える。
その結果、同じ会社の中でも、1on1の質や意味づけに大きなばらつきが生まれます。
大切なのは、きれいな目的文を作ることではありません。
現場の管理職と部下が、「だからこの時間が必要なのだ」と理解できる状態をつくることです。
2つ目:実施率だけでなく、運用実態を把握しているか
次に確認したいのは、1on1の運用実態です。
ここでいう運用実態とは、単に「何回実施したか」だけではありません。
- どのような内容が話されているのか
- 部下はその時間をどう受け止めているのか
- 管理職は何に難しさを感じているのか
- 実施後に何らかの行動や支援につながっているのか
こうした情報を把握することが重要です。
もちろん、1on1の内容は個別性が高く、すべてを人事が把握すべきものではありません。むしろ、個別の会話内容を細かく管理しようとすると、1on1の安心感が損なわれるおそれもあります。
人事が把握すべきなのは、個々の会話の詳細ではなく、組織としての傾向です。
- 1on1が業務確認中心になっていないか
- 部下は安心して話せていると感じているか
- 管理職は1on1の進め方に迷っていないか
- 1on1が負担やストレスになっていないか
- 部署や管理職によって、受け止めに大きな差がないか
- 1on1で話したことが、その後の支援や行動につながっているか
こうした傾向を把握することで、初めて「何を見直すべきか」が見えてきます。
3つ目:管理職を支援する設計になっているか
3つ目は、管理職支援の設計です。
1on1は、管理職にとって簡単な取り組みではありません。
部下の話を聴くことも、問いかけることも、助言とのバランスを取ることも、実際には高度なマネジメント行動です。
にもかかわらず、「1on1を実施してください」と伝えるだけで、あとは管理職任せになっている企業もあります。
この状態では、管理職ごとの経験や得意不得意によって、1on1の質に差が出るのは自然なことです。
人事として確認したいのは、管理職が1on1を続け、改善していくための支援が設計されているかどうかです。
- 1on1の目的や基本的な進め方を学ぶ機会
- 傾聴や問いかけを練習する機会
- 管理職同士が困りごとを共有する場
- 1on1の実施後に振り返る仕組み
- 部下の受け止めを確認する仕組み
- 管理職が相談できる窓口や伴走支援
ここで重要なのは、管理職を責めるために支援するのではないということです。
1on1がうまくいかないとき、管理職本人も困っている場合があります。
- 何を話せばよいのか分からない
- 部下が本音を話してくれない
- 時間を取っているのに効果が感じられない
- 忙しい中で継続する意味を見出しにくい
こうした管理職の困りごとを把握し、必要な支援を用意することが、1on1を立て直すうえで欠かせません。
まずは、自社の1on1で何が起きているかを見直す
1on1がうまく機能していないと感じたとき、すぐに新しい施策を増やす必要はありません。
最初に行うべきことは、評価や原因追及ではなく、自社の1on1で何が起きているのかを見える化することです。
そのためには、次のような情報を整理してみるとよいでしょう。
- 1on1は、どの部署で、どの頻度で実施されているか
- 管理職は、1on1の目的をどのように理解しているか
- 部下は、1on1をどのような時間として受け止めているか
- 1on1の中で扱われているテーマは何か
- 管理職が難しさを感じている点は何か
- 部署や階層によって、実施状況や受け止めに差はあるか
- 1on1の実施後、部下の行動や上司の支援に変化はあるか
この段階で大切なのは、すぐに「良い・悪い」を判断しないことです。まずは事実と感じ方を切り分けて眺めることです。
実施率は高いが、部下の満足度は低い。管理職は有効だと感じているが、部下は業務確認の場だと受け止めている。一部の部署では機能しているが、別の部署では形だけになっている。
こうした違いが見えてくると、必要な打ち手も変わります。
- 目的の再共有が必要なのか
- 管理職向けの実践支援が必要なのか
- 部下側にも1on1の受け方を伝える必要があるのか
- 制度運用そのものを見直す必要があるのか
現状把握は、次の施策を決めるための土台になります。
1on1の形骸化は、組織の対話を見直すサイン
1on1が形骸化している状態は、単に「上司と部下の面談がうまくいっていない」という問題にとどまりません。
その背景には、組織として何を大切にしたいのか、管理職にどのような関わりを期待するのか、部下の成長をどのように支援するのかという、より大きなテーマがあります。
1on1は、制度を導入しただけでは機能しません。また、実施率を管理するだけでも十分ではありません。
重要なのは、1on1が現場でどのような時間になっているのかを把握し、必要な支援や仕組みを整えていくことです。
- 1on1の目的が現場の言葉で共有されているか
- 実施率だけでなく、運用実態を把握できているか
- 管理職を支援する設計になっているか
1on1がうまく機能していないと感じたとき、最初に必要なのは、誰かを責めることではありません。また、すぐに新しい施策を増やすことでもありません。
まずは、自社の1on1で何が起きているのかを丁寧に見つめ直すこと。
そこから、1on1を「実施する制度」から「部下の成長と組織の対話を支える仕組み」へと育てていくことができます。
BizMentorからのご案内
1on1施策が形骸化していると感じる場合、最初に必要なのは、施策を増やすことではなく、現場で何が起きているのかを把握することです。
BizMentorでは、1on1施策の現在地を整理し、見直しの優先テーマを確認するための「1on1診断」を提供しています。
自社の1on1が、実施されているだけでなく、部下の成長支援や組織の対話にどのようにつながっているのかを確認したい場合は、まず現状把握から始めてみてください。
※本記事は、Hcross掲載コラムをもとに、BizMentorサイト向けに一部加筆・再編集したものです。


