2026/07/01

1on1ミーティング

1on1を“管理職任せ”にすると、なぜうまくいかないのか

1on1を「管理職任せ」にするとなぜうまくいかないのか
この記事で分かること
  • 1on1が「管理職任せ」になったときに起きやすい問題
  • 管理職個人の努力だけでは1on1が機能しにくい理由
  • 人事が担うべき「管理」ではなく「設計と支援」の役割
  • 1on1を組織で支える施策に変えるための視点

1on1ミーティングを導入したものの、期待したほど効果が出ていない。

そのような企業でよく見られるのが、1on1の運用が実質的に「管理職任せ」になっている状態です。

このような状態になっていませんか?

制度としては導入されている。

実施頻度や対象者も決まっている。

管理職向けの説明会やマニュアルも用意した。

それでも現場では、1on1が業務進捗確認で終わっていたり、上司からのアドバイス中心になっていたり、管理職によって進め方に大きなばらつきが出ていたりすることがあります。

このとき、人事としては「管理職の理解が足りない」「もっと意識を高めてもらう必要がある」と考えたくなるかもしれません。もちろん、管理職本人の理解や姿勢は重要です。

しかし、1on1がうまく機能しない原因を、管理職個人の問題だけにしてしまうと、本質を見落とすことがあります。1on1は、管理職一人ひとりの努力だけで成立する施策ではありません。組織としての目的、共通認識、支援の仕組みがあってこそ、現場で機能し始めるものです。

「実施してください」だけでは、現場は動きにくい

1on1を導入するとき、多くの企業では管理職に対して、実施頻度や目的、基本的な進め方を説明します。

たとえば、「月1回、部下と30分の1on1を実施してください」「部下の成長支援やエンゲージメント向上のために行います」「傾聴を大切にしてください」といった説明です。

これらは必要な情報です。しかし、それだけで管理職が質の高い1on1を継続できるとは限りません。

管理職の立場から見ると、1on1にはいくつもの難しさがあります。

管理職が感じやすい難しさ
  • 何を話題にすればよいのか
  • 業務の話と成長支援の話をどう分ければよいのか
  • 部下が本音を話してくれないとき、どう関わればよいのか
  • どこまで聴き、どこから助言すればよいのか
  • 忙しい中で、どのように意味のある時間にすればよいのか

こうした問いに対して、明確な支援がないまま「実施してください」と伝えるだけでは、管理職は自分の経験や感覚に頼って進めるしかありません。

その結果、1on1の内容は管理職ごとに大きくばらつきます。ある管理職は雑談中心に進め、別の管理職は業務報告の場として扱い、また別の管理職は部下への指導や助言の時間として使う。いずれも本人なりに真剣に取り組んでいても、会社として期待している1on1とはずれてしまうことがあります。

管理職任せにすると起きやすい3つの問題

1on1を管理職任せにしたとき、現場では主に3つの問題が起きやすくなります。

問題1
1on1の目的がばらつく

組織としての共通認識がないまま進むと、1on1の目的が現場ごとに分散していきます。

問題2
管理職の経験値に依存する

対話が得意な管理職とそうでない管理職の差が、そのまま1on1の質の差につながりやすくなります。

問題3
人事が実態を把握しにくくなる

実施率や記録は確認できても、現場でどのような対話が行われているかまでは見えにくくなります。

1つ目:1on1の目的がばらつく

最初に起きるのは、目的理解のばらつきです。

人事としては「部下の成長支援のため」「対話を通じて関係性を高めるため」と説明していても、現場の管理職がそれをどのように理解しているかは別問題です。

  • ある管理職は「部下の悩みを聞く時間」と捉えるかもしれません
  • 別の管理職は「業務の進捗を確認する時間」と捉えるかもしれません
  • また別の管理職は「部下を指導する時間」と捉えるかもしれません

どれも完全に間違いとは言えません。しかし、組織としての共通認識がないまま進むと、1on1の目的は現場ごとに分散していきます。その結果、同じ会社の中で、部下が経験する1on1の質に大きな差が生まれます。

2つ目:管理職の経験値に依存する

次に起きるのは、管理職の経験値への依存です。

部下の話を聴くこと、問いかけること、考えを整理すること、必要に応じて助言すること。これらは一見すると簡単そうに見えますが、実際には高度なマネジメント行動です。

特に、成果を出してきた管理職ほど、自分の経験をもとに「こうした方がよい」と助言したくなることがあります。もちろん助言が必要な場面もあります。しかし、1on1の多くが助言中心になると、部下が自分で考える機会は減ってしまいます。

また、対話が得意な管理職と、そうでない管理職の差も出ます。もともと部下との関係づくりが得意な人は自然に進められる一方で、そうでない人は何を話せばよいか分からず、結果として進捗確認に寄ってしまうことがあります。

これは管理職の意欲の問題とは限りません。1on1に必要な関わり方を学び、練習し、振り返る機会が不足しているだけかもしれません。

3つ目:人事が実態を把握しにくくなる

管理職任せの状態が続くと、人事は1on1の実態を把握しにくくなります。

  • 実施率は確認できる
  • 実施記録も残っている
  • しかし、実際にどのような対話が行われているのか、部下がどう受け止めているのか、管理職が何に困っているのかまでは見えない

この状態では、課題に合った打ち手を選ぶことが難しくなります。

  • 本当は目的共有が不足しているのか
  • 管理職のスキル支援が必要なのか
  • 部下側に1on1の受け方を伝える必要があるのか
  • あるいは、制度運用の負荷が高すぎるのか

原因が見えないまま施策を追加すると、現場には「また人事から新しい取り組みが来た」と受け止められてしまうことがあります。

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人事が担うべき役割は「管理」ではなく「設計と支援」

1on1を機能させるうえで、人事の役割は、単に実施状況を管理することではありません。

もちろん、実施状況の確認は必要です。しかし、それだけでは1on1の質は高まりません。人事が担うべき役割は、管理職が1on1を意味ある時間として実施できるように、施策全体を設計し、支援することです。

具体的には、次の3つが重要です。

役割1
自社における1on1の位置づけを明確にする

1on1を単なる追加業務ではなく、マネジメントの一部として捉えられるようにする。

役割2
管理職が学び、練習し、振り返る機会をつくる

知識の提供だけでなく、実践後に振り返り、改善していく機会を設計する。

役割3
現場の受け止めを継続的に把握する

個別の会話内容ではなく、部下・管理職・部署ごとの傾向を把握し、改善につなげる。

1つ目:自社における1on1の位置づけを明確にする

まず、自社における1on1は何のために行うのかを、現場の言葉で整理する必要があります。

  • 評価面談との違いは何か
  • 業務ミーティングとの違いは何か
  • 部下の成長支援とどのように関係するのか
  • 管理職にはどのような関わりを期待するのか
  • 部下にはどのように活用してほしいのか

この位置づけが明確になると、管理職は1on1を単なる「追加業務」ではなく、マネジメントの一部として捉えやすくなります。

2つ目:管理職が学び、練習し、振り返る機会をつくる

1on1は、知識を伝えただけで上達するものではありません。実際にやってみて、うまくいかなかった場面を振り返り、次の関わり方を考えることで少しずつ改善されます。

そのためには、管理職向けの研修だけでなく、実践後の振り返りや、管理職同士で困りごとを共有する場が有効です。

扱いたい具体テーマの例
  • 部下が話してくれないときにどうするか
  • つい助言が多くなってしまうときにどうするか
  • 業務確認だけで終わらせないために、どのような問いを使うか

このような具体的なテーマを扱うことで、管理職は現場で使えるヒントを得やすくなります。

3つ目:現場の受け止めを継続的に把握する

1on1を継続的に改善するには、現場の受け止めを把握することも重要です。

ここで大切なのは、個別の会話内容を人事が細かく管理することではありません。

  • 部下が1on1をどのような時間として受け止めているか
  • 管理職がどこに難しさを感じているか
  • 部署によって差が出ていないか

組織としての傾向をつかむことが重要です。

こうした情報があると、次に必要な支援が見えやすくなります。

  • 目的の再共有が必要なのか
  • 管理職の実践支援が必要なのか
  • 部下向けの説明が必要なのか
  • 制度運用の見直しが必要なのか

現場実態に基づいて施策を見直すことで、1on1は少しずつ組織に合った形へと育っていきます。

1on1は、管理職だけでなく組織で育てる施策である

1on1は、最終的には上司と部下の間で行われるものです。その意味では、管理職の関わり方が重要であることは間違いありません。

しかし、1on1を管理職任せにしてしまうと、目的のばらつき、スキル差、実態把握の難しさが生まれやすくなります。

人事が担うべき役割
  • 1on1の目的を明確にする
  • 管理職が学び、振り返る機会をつくる
  • 現場の声をもとに施策を改善する

人事が担うべきなのは、管理職を監視することではありません。管理職が1on1を通じて部下の成長を支援しやすくなるように、目的を明確にし、学びと振り返りの機会をつくり、現場の声をもとに施策を改善していくことです。

1on1は、導入して終わりの制度ではありません。管理職だけが頑張るものでもありません。

人事と現場が一緒に育てていく、組織の対話を支える仕組みです。

「管理職任せ」から「組織で支える1on1」へ。

その視点を持つことが、1on1を形だけの制度で終わらせず、現場で機能する施策へと変えていく第一歩になります。

BizMentorからのご案内

1on1施策が管理職任せになっていると感じる場合、まず必要なのは、管理職を責めることではなく、現場で何が起きているのかを把握することです。

BizMentorでは、1on1施策の現在地を整理し、見直しの優先テーマを確認するための「1on1診断」を提供しています。

自社の1on1が、管理職個人の努力だけに依存していないか、組織として支える設計になっているかを確認したい場合は、まず現状把握から始めてみてください。

※本記事は、Hcross掲載コラムをもとに、BizMentorサイト向けに一部加筆・再編集したものです。

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