2026/09/02

1on1ミーティング

部下が本音を話せない1on1で起きていること ― 対話の質を高めるために、人事が見直したいポイント ―

この記事で分かること
  • 部下が1on1で本音を話せないときに起きていること
  • 部下が話さない理由を「意欲の問題」だけで見ないための視点
  • 本音が出にくい1on1に見られる3つのパターン
  • 人事が見直したい、目的共有・上司の関わり方・部下側への説明

1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に対話する場として、多くの企業で導入されています。

部下の成長支援につなげたい。上司と部下の相互理解を深めたい。日常業務の中では話しにくいことも扱える場にしたい。

そうした期待を込めて、1on1を制度として整えている企業も多いのではないでしょうか。

このような状態になっていませんか?

「1on1を実施しているが、部下があまり話してくれない」

「毎回、業務の進捗確認だけで終わってしまう」

「上司は話を聞いているつもりだが、部下は本音を出していないように見える」

「部下から見ると、1on1が評価や指導の場のように感じられている」

このような状態では、1on1は形式上は実施されていても、部下にとって意味のある対話の場にはなりにくくなります。

1on1を機能させるためには、上司が一生懸命話すことよりも、部下が安心して話せる状態をつくることが重要です。

本記事では、部下が本音を話せない1on1で起きていることと、人事が見直したいポイントを整理します。

部下が話さないのは、意欲の問題とは限らない

1on1で部下があまり話さないとき、上司は「何を考えているのか分からない」「もっと主体的に話してほしい」と感じることがあります。

人事としても、「部下側の1on1への参加意識が低いのではないか」と考えることがあるかもしれません。

もちろん、部下側にも1on1の目的や活用方法を理解してもらうことは大切です。しかし、部下が話さない理由を、本人の意欲や姿勢だけに求めるのは注意が必要です。

部下が本音を話せない背景には、いくつかの要因があります。

部下が本音を話しにくくなる背景
  • 話した内容が評価に影響するのではないかと感じている
  • 弱音や悩みを話すと、能力が低いと思われるのではないかと不安になる
  • 過去に話したことが十分に受け止められなかった経験がある
  • 相談しても、結局は上司からの助言や指示で終わってしまう
  • そもそも何を話せばよいのか分からない

このような状態では、部下は1on1の場にいても、安心して自分の考えや悩みを出すことが難しくなります。

つまり、部下が話さないという現象の裏側には、「話したくない」のではなく、「話してよいと思えていない」「話しても意味があると思えていない」という状態が隠れている場合があります。

本音が出にくい1on1に見られる3つのパターン

部下が本音を話せない1on1には、いくつかの共通パターンがあります。

パターン1
評価面談のように受け止められている

上司との面談である以上、部下が「評価される場」と感じてしまうことがあります。

パターン2
上司が話しすぎている

上司の助言や説明が多くなり、部下が自分の言葉で話す余地が少なくなっている状態です。

パターン3
何を話せばよいかが共有されていない

1on1で扱えるテーマが分からず、部下が無難な業務報告に寄ってしまうことがあります。

1つ目:評価面談のように受け止められている

1on1は、本来、部下の成長支援や相互理解のための対話の場です。しかし、部下から見ると、上司との面談である以上、「評価される場」と感じられることがあります。

特に、1on1の中で上司からの指摘やアドバイスが多くなると、部下は「ここで話す内容は評価につながるかもしれない」と感じやすくなります。

  • 困っていることを話したら「それは自分で考えて」と言われた
  • 悩みを相談したら、すぐに改善点を指摘された
  • 弱音を話したら、期待に応えられていないように受け止められた

このような経験があると、部下は次第に無難なことだけを話すようになります。

「問題ありません」「順調です」「特に困っていることはありません」。こうした回答が続いている場合、実際に問題がないとは限りません。部下が「この場では深い話をしない方がよい」と判断している可能性もあります。

2つ目:上司が話しすぎている

部下が本音を話せない1on1では、上司がよかれと思って話しすぎているケースもあります。

上司は部下のためを思って、経験談を伝える。改善点を指摘する。解決策を示す。次にやるべきことを助言する。

これらは、決して悪い関わりではありません。むしろ、上司として真剣に部下を支援しようとしているからこそ起きることです。

しかし、上司の発言が多くなると、部下が自分で考えたり、自分の言葉で話したりする余地が少なくなります。

  • 部下が少し話しただけで、上司がすぐに答えを示す
  • 部下が迷いを話す前に、上司が結論を出す
  • 部下が沈黙していると、上司が不安になって話し続ける

このような1on1では、部下は「自分で話す時間」ではなく、「上司の話を聞く時間」と受け止めやすくなります。

3つ目:何を話せばよいかが共有されていない

1on1では、部下が話すテーマを持ち込むことが大切だと言われることがあります。しかし、部下にとっては、「何を話せばよいのか」が分かりにくい場合があります。

  • 業務の進捗を話せばよいのか
  • 困りごとを相談すればよいのか
  • キャリアのことを話してよいのか
  • 人間関係の悩みを話してよいのか
  • まだ整理できていない考えを話してもよいのか

このようなことが分からないまま1on1に参加すると、部下は無難な業務報告に寄りやすくなります。

その結果、上司も業務確認をし、部下も業務報告をする。そして、1on1が通常の業務ミーティングのようになっていきます。

これは、部下に主体性がないから起きるとは限りません。1on1をどのように使えばよいかが、部下側に十分に伝わっていないだけかもしれません。

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人事が見直したい3つのポイント

では、部下が本音を話せない1on1を改善するために、人事は何を見直せばよいのでしょうか。

ここでは、特に重要な3つのポイントを整理します。

ポイント1
1on1の目的と扱うテーマを明確にする

1on1は何のための時間なのか、部下がどのようなテーマを持ち込んでよいのかを共有します。

ポイント2
上司の聴き方・問いかけ方を支援する

上司がすぐに助言せず、部下の考えを引き出す関わり方を学べるようにします。

ポイント3
部下側にも1on1の受け方を伝える

1on1を上司が行う面談ではなく、部下自身の成長や前進のために活用できる場として伝えます。

1つ目:1on1の目的と扱うテーマを明確にする

まず確認したいのは、1on1の目的と扱うテーマが、上司だけでなく部下にも伝わっているかどうかです。

  • 1on1は何のための時間なのか
  • 評価面談や業務ミーティングとは何が違うのか
  • 部下はどのようなテーマを持ち込んでよいのか
  • 話した内容はどのように扱われるのか

これらが曖昧なままだと、部下は安心して話しにくくなります。

特に重要なのは、1on1は「評価のために部下をチェックする場」ではなく、「部下の成長や前進を支援するための対話の場」であることを、現場の言葉で共有することです。

また、部下に対しても、1on1で扱えるテーマ例を示すとよいでしょう。

部下に示したいテーマ例
  • 最近の仕事で困っていること
  • うまくいったこと、学びになったこと
  • 今後挑戦したいこと
  • 上司に支援してほしいこと
  • キャリアや成長に関する相談
  • チーム内で気になっていること

こうした例があると、部下は1on1を活用しやすくなります。

2つ目:上司の聴き方・問いかけ方を支援する

部下が本音を話せるかどうかは、上司の関わり方に大きく左右されます。

  • 上司がすぐに助言する
  • 話の途中で遮る
  • 正解を示そうとする
  • 沈黙を待てない
  • 部下の話を評価や指導にすぐ結びつける

このような関わりが続くと、部下は本音を話しにくくなります。

人事としては、管理職に対して「もっと聴いてください」と伝えるだけでは不十分です。どのように聴くのか、どのように問いかけるのか、どのタイミングで助言するのか、沈黙をどう扱うのか。こうした具体的な関わり方を、学び、練習し、振り返る機会が必要です。

部下が考えを整理しやすくなる問いかけの例
  • 「今、一番気になっていることは何ですか」
  • 「その件について、どのように感じていますか」
  • 「自分では、何が原因だと思いますか」
  • 「上司として、どのような支援があるとよさそうですか」
  • 「次に試してみたいことはありますか」

問いかけは、部下から答えを引き出すためだけの技術ではありません。部下が自分の考えを言葉にし、自分で整理していくための支援でもあります。

3つ目:部下側にも1on1の受け方を伝える

1on1を改善しようとすると、どうしても管理職側のスキル支援に目が向きがちです。

もちろん、管理職の関わり方は重要です。しかし、1on1は上司だけでつくるものではありません。部下側にも、1on1をどのように活用すればよいかを伝える必要があります。

  • 1on1は、業務報告だけの場ではないこと
  • まだ整理できていないことも話してよいこと
  • 困っていることや迷っていることを共有してよいこと
  • 上司にしてほしい支援を言葉にしてよいこと
  • 自分の成長やキャリアについて考える時間として使ってよいこと

部下が1on1の使い方を理解すると、上司任せではなく、自分自身の成長や前進のために1on1を活用しやすくなります。

これは、1on1を「上司が実施する面談」から、「上司と部下がともにつくる対話の場」へ変えていくうえで重要な視点です。

本音を話せる1on1は、一度でつくれるものではない

部下が本音を話せる1on1は、一度の説明や一度の研修だけでつくれるものではありません。

  • 上司が安心して話を聴く
  • 部下が少しずつ話してみる
  • 話したことが受け止められる
  • 必要な支援や行動につながる

その積み重ねによって、「この場で話しても大丈夫だ」「話す意味がある」と感じられるようになります。

逆に言えば、部下が本音を話さないからといって、すぐに「1on1が失敗している」と判断する必要はありません。大切なのは、部下が話しにくくなっている要因を丁寧に見直すことです。

人事が確認したい問い
  • 1on1の目的は共有されているか
  • 評価や指導の場として受け止められていないか
  • 上司が話しすぎていないか
  • 部下が何を話せばよいか理解しているか
  • 話したことが、その後の支援や行動につながっているか

こうした点を確認することで、改善の糸口が見えてきます。

1on1は、部下が安心して話せる場に育てていくもの

1on1は、制度として導入すれば自然に本音が出るものではありません。また、上司が熱心に関われば、それだけで部下が安心して話せるようになるものでもありません。

部下が本音を話せる1on1にするためには、目的の共有、上司の関わり方、部下側の理解、そして話したことが支援につながる経験が必要です。

人事が担うべきなのは、上司と部下の会話内容を細かく管理することではありません。

  • 1on1が、評価や指導の場として受け止められていないか
  • 管理職が、部下の話を引き出す関わり方を学べているか
  • 部下が、1on1を自分の成長や前進のために活用できているか

こうした観点から、組織としての傾向を把握し、必要な支援を整えていくことです。

部下が本音を話せない状態は、部下個人の問題とは限りません。それは、1on1の目的や運用、上司の関わり方、部下への説明を見直すサインかもしれません。

1on1を、ただ実施する時間から、部下が安心して話し、成長に向けて一歩を踏み出せる対話の場へ。そのためには、上司任せでも、部下任せでもなく、組織として1on1を育てていく視点が求められます。

BizMentorからのご案内

部下が本音を話せない1on1になっていると感じる場合、まず必要なのは、部下の意欲だけを問題にすることではなく、現場で何が起きているのかを把握することです。

BizMentorでは、1on1施策の現在地を整理し、見直しの優先テーマを確認するための「1on1診断」を提供しています。

自社の1on1が、部下にとって安心して話せる場になっているか、成長支援や組織の対話につながっているかを確認したい場合は、まず現状把握から始めてみてください。

※本記事は、Hcross掲載コラムをもとに、BizMentorサイト向けに一部加筆・再編集したものです。

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