2025/05/23
1on1ミーティング
1on1の質を高める問いの設計

前回のブログでは「形骸化する1on1の処方箋」として、1on1に関わる三者(上司・部下・組織)の視点から、形骸化を防ぐためのポイントを整理しました。今回はその続編として、「質を高める問いの設計」に焦点をあてます。
1on1は単なる対話の場ではなく、信頼と成長を育む機会。そこに投げかける「問い」こそが、その質を大きく左右します。
上司の立場:「意図ある問い」が関係性をつくる
上司が1on1でつい陥りがちなのは、「進捗確認」や「アドバイスの提示」に終始するスタイル。しかし、対話の主導権を上司が握りすぎると、部下の内省や主体性を妨げることもあります。
質を高めるには、「相手の思考を深める問い」がカギとなってきます。たとえば:
- 最近、どんな瞬間にやりがいを感じましたか?
- 今、どんなことにモヤモヤしていますか?
- あえて振り返ると、どんな学びがありましたか?
問いには“相手を信じて任せる”姿勢がにじみ出てくるもの。その意図を持った問いは、単なる会話を“信頼の対話”に変えていきます。
部下の立場:「答えを出す」より「考える」プロセスを大切に
1on1を「評価の場」「正解を出す場」と捉えてしまうと、本音は出しにくくなってしまいます。問いに対してすぐに答えを出す必要はありません。むしろ、「考えるプロセス」そのものが自身の成長に繋がっていきます。
問いを受けたときに、すぐに答えが出ないと感じたら、それをそのまま伝えてみましょう。「正直まだ整理できていません」「考えるきっかけになります」など、自分の状態を共有することが、上司との対話の深まりにつながります。
組織の立場:問いの文化が、対話の質を底上げする
問いの力は、個人間の対話にとどまりません。チームや組織に「問いの文化」があるかどうかは、1on1の質にも大きく影響します。たとえば、会議や日常のやりとりの中で、
- その意図はなんですか?
- 私たちはどこを目指しているんでしょう?
- そもそも、これって何のためにやってる?
といった問いが自然に交わされる文化が根づけば、1on1もまた、表面的な進捗確認から抜け出し、探究と成長の場になります。
まとめ:問いの質が、対話の深さを決める
良い問いは、相手の中にある「まだ言語化されていない思い」に光を当てます。1on1の質を高めるとは、つまり“問いの質を高める”ということ。問いは、誰かの答えを引き出すだけでなく、自分自身の在り方も映し出してくれます。
問いを磨くことは、上司・部下・組織、すべての立場にとって、信頼と成長のベースづくりと言えるでしょう。
執筆:田部井 茉里 メンター
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