練習と本物体験をしなければ、1on1のスキルは高められない
1on1ミーティングを導入・定着させるための大切なポイント
林:1on1を導入する企業は、今後ますます増えていくと思いますが、これから導入する企業に対して、1on1の導入や定着の上での大切なポイントについて、アドバイスをお願いします。
川嶋様:研修でスキルを学習することは大切なことですが、もっと大切なことは、1on1のセッション練習を行ったことでした。練習や経験を積むことで、自分なりの気づきが得られました。教科書の内容は表面的には理解していると思いますが、本当に理解しているかというと、研修を受けただけでは、理解したつもりになってるだけなんですよね。実際に1on1セッションをやってみると難しいですが、練習することで1on1の進め方が身についてきます。当たり前かもしれないですけれども、実践を積めば積むほど上手くなるのを実感します。本当にそこに尽きるな、と思っています。
林:スポーツなどと同じで、1on1スキルも、練習回数と上達度合いには比例関係がありそうです。
川嶋様:「近道はない」ということですね。最初の数回のセッション練習は、教科書を見ながらセッションを進めるのですが、進め方に気を取られて相手の話があまり入ってこないんですよね。「次に何を言おう?」って考えてしまうので(笑)それが、何回も練習すると、型が自然に分かってくるので、やっとそこで相手の話を聞けるようになりました。相手の話を理解した上で、「こういうことだよね」って本当の意味でのリフレインもできるようになりますし、「次の質問はこうして、次は...」というように進め方の道筋が30分の中で光がハッキリと見えてくるんですよね、「こうだな」と。こういうことは、何回もやってみないと見えてこない。それができるようになるには、やはり練習しかないなと。
あとは、プロのメンターの方から1on1を受けた経験ですね。メンティ側の立場に立つという意味でもそうですし、スキルを盗むということでも非常に重要かなと思っています。それは自分がメンター役で行う練習セッションの経験ではなかなか培えないところで、上達する秘訣として大きかったと思うので、セッション練習とセットでぜひやっていただくと良いと思います。
林:一つは複数回の1on1の練習をすること、もう一つはプロのメンターから1on1を受ける体験ですね。これが大切なポイントだと。
セッション練習回数について、「1on1実践トレーニング®︎」では、トレーニング期間中、標準で往復15回行うことになっていますが、今回は業務の都合で少し回数を減らして、往復9〜10回の練習セッションを行なっていただきました。トレーニングを終えられて、練習セッションの回数は、どのくらいが適量と思われますか?
川嶋様:個人的には、9回から10回が最低ラインかと思います。それより少ないと、たぶん、スキルが身につかないと思います。なので、最低でも10回はやるべきかと思いますね。中盤以降に学習する「経験学習モデル」とか「GROWモデル」になると、進め方が複雑になってくるので、トレーニング初期のセッション練習回数は少なめにしたとしても、中盤以降の「経験学習モデル」や「GROWモデル」のセッション練習回数は増やした方がいいですね。そしてトータルで、最低でも10回から12回程度のセッション練習を行うのが適量だと思います。
今後の組織開発・人材育成の取組み
林:今後、1on1を含めた組織開発や人材育成について、どのような取り組みをされる予定か、差し支えない範囲で教えていただければと思います。
川嶋様:引き続き、全管理職で1on1をやっていこうということと、パーパス経営の取り組みを行なっているので、部署全体で事業のパーパスを全員で考えて、その浸透活動を行なっています。そしてその後の「行動」ですね。行動指針については、会社全体で決まっているものはあるのですが、これを踏まえて一人ひとりが「自分はどう行動していくのか」を考えてもらい発表してもらう、といった取り組みも行なっています。
外部事業者に期待すること
林:今後、1on1の取組みの推進や定着させていくために、我々のような外部事業者に期待することをお聞かせください。
川嶋様:1on1セッション終了後の本音の評価です。1on1メンティである部下が上司の1on1を評価すると、自分が評価したと分かってしまうので、良い評価になってしまう可能性があります。忖度のない、本当のフィードバックと評価をプロのメンターを含む外部の方に行なってもらえるといいですね。直接的な内容はオブラートに包みながらも、改善のポイントを伝えることができると、本人の改善につながるのではないかと思います。
教えたくなる気持ちを抑えた1on1が、部下を能動的に変える
これから1on1ミーティングを行う管理職の方々へのメッセージ
林:では、最後になりますが、これから1on1を行う管理職の方などに向けて、実践していく上でのアドバイスをお願いします。
川嶋様:自身が上司という立場に立つので、指示命令や教えたい衝動に駆られることがありますが、最初はそこを抑え、相手に考えさせることが大切だと思います。時間はかかるかもしれませんが、最初はゆっくりスタートし、一度軌道に乗れば部下が自発的に行動し始めます。
教えたくなる気持ちをこらえて、まずは部下の話を聞き、彼ら自身が考えるようになることが重要です。部下が自分で考え、行動できるようになるまでには時間がかかりますが、ぜひその時間をかけて支援してください。絶対に後悔しないばかりか、部下が自発的に動くことで上司も楽になり、部下のモチベーションやエンゲージメントも高まります。時間が足りないと思わず、部下としっかり向き合っていただきたいと思います。
(おわり)