CASE
導入事例

「指示待ち」だった部下が能動的になり上司の負荷が減った

株式会社 NTTデータ
法人事業推進部 BPR推進室
川嶋 啓史 氏(研修導入ご担当者 兼 研修メンバー)
 
事業内容
NTTデータグループは、日本のシステムインテグレーター(SI)の先駆者として、情報システムの構築やネットワークシステムサービスを提供している。官公庁や自治体、金融機関、様々な業種の企業へ向けた、情報システムの構築を行なっているほか、世界50ヵ国以上でITサービスを提供。コンサルティングからシステムづくり、システムの運用に至るまで、さまざまなサービスを提供している。
企業規模
151,991名(2021年度 3月31日現在・海外グループを含む)
 

導入前の課題

  • 離職者が発生してることから、上司・部下間のコミュニケーションを活性化させる
  • 管理職の負荷を高めている「指示待ち」部下を、能動的に行動できるように変える
 

導入サービス

  • 1on1実践トレーニング®︎
 

導入後の効果

  • 上司の1on1が「教える型」から「聴く型」に変化した
  • 上司・部下間の信頼関係が強くなり、高負荷の上司を部下が自発的にサポートするようになった
  • 上司も部下もモチベーションが高まった
 
コロナ禍でリモートワークが導入され、上司・部下間のコミュニケーションの機会が減少した企業は多いのではないでしょうか。その結果、「指示待ち」の部下が増えたり、離職率が上がったりして、管理職の負荷が大幅に高まっている企業は少なくないようです。今回は、弊社の「1on1実践トレーニング®︎」を導入され、このような問題の改善に取り組まれている、株式会社NTTデータ 法人事業推進部 BPR推進室 室長の川嶋啓史氏にお話を伺いました。聞き手は、(一社) 日本リレーショナルリーダーシップ協会(JRLA)の林 英利とパートナーコンサルタントの長岡美恵氏が担当しました。

忙しい上司と部下のコミュニケーション不足を解消したい

組織および事業の概要

林(JRLA):まずは、「1on1実践トレーニング®︎」(以下「当トレーニング」)を導入された、組織の事業内容をお聞かせください。

川嶋様(NTTデータ):ERP(Enterprise Resource Planning=企業資源計画)と言われている、様々な企業の統合基幹システムを導入する業務を行なっています。ERPを導入するための、上流のコンサルティングから、導入、そして導入後の保守メンテナンスまで、一連の全てを行なっている部署です。

案件数で言えば、7割がグローバル案件となっており、メンバーは国内外グループ会社やパートナー企業と連携して業務を遂行しています。

1on1ミーティングを導入した背景

:全社的な方針で、今後、1on1ミーティング(以下「1on1」)を展開する動きがあるとのことですが、所属組織では、どのような経緯で1on1を導入することになったのでしょうか。

川嶋様:管理職が忙しすぎて、部下とのコミュニケーションが十分に取れておらず、それが直接的な原因ではないかもしれませんが、部下の離職も発生してしまっていて、上司・部下間のコミュニケーションを良くしていく必要があるとの話になりました。それは「飲み会で」という話もありますが、それとは別に、しっかりと部下と向き合っていかなければならないと思うようになっていました。

そういった、コミュニケーションを活性化しようということと、もう一つは、部下が「指示待ち」になっている状況が見受けられたので、それをいかに改善していくのか。検討の中で、解決の手段の一つとして「1on1が良いのではないか」ということになりました。

コロナ禍でリモート勤務となったこともあり、部下に細かく指示しなければならなくなっていて、管理職の稼働がすごく増えてしまった。それを改善する一歩として、部下が能動的に動けるようにする必要がある。それが一番の課題でした。

:ご自身は、当トレーニングの前、チーム運営やスタッフ育成において、どのような課題や悩みなどがありましたか?

川嶋様:大きな悩みはありませんでしたが、コロナ禍でリモート業務になったことで、部下とタイミングが合わなくなって、阿吽の呼吸がなくなり、意思疎通が難しくなったと感じていました。

進捗MTGのような1on1では部下の「指示待ち」は変わらない

「1on1実践トレーニング®︎」で課題解決したかったこと

:当トレーニングを導入する前は、組織の中で1on1は行われていたのでしょうか。

川嶋様:1on1をやってる人は、ほとんどいなかったですね。一部の人はやっていましたが、自己流のため業務の進捗会議のようになっていて、上司が一方的に話し、部下が分からないところを質問する、みたいなものだったと聞いています。そのような1on1では、コミュニケーションの活性化とか、部下が能動的になるような行動変容には繋がっていないと思いました。

導入時の工夫

:今回の当トレーニングを導入するにあたって、導入ご担当者として、どのようなことに留意されたのでしょうか。

川嶋様:今回のトレーニングは、「やりたい」と手を挙げた人が参加する形で行うことにしましたが、たくさんの課題を抱える管理職の皆さんですので、「時間がないから」と断る人がほとんどだと思っていました。ですので、「断るのはもったいない」ということも含めて、導入の背景や目的、トレーニングに参加する皆さんにとって、どのようなメリットがあるのかなどを丁寧に説明するようにしました。それが無かったら、誰も参加しなかったと思います。

結果、私の予想よりも多く6名の管理職の方が手を挙げて、私を含めた7名でこのトレーニングをスタートすることになりました。

相手の内省と行動を促す1on1のスキル

トレーニング開始後の変化

:ご自身も他の研修メンバーとともに当トレーニングを受けられましたが、1on1に対するイメージや印象はどのように変わりましたか?

川嶋様:トレーニング前は、そもそも1on1のことをよく分かっていなかったっというのが正直なところで(笑)、ざっくりと「お悩み相談」みたいなものなのかと思っていました。トレーニングを開始してみて、実際はそうではないということと、相手のやる気や考えを引き出して、その次の行動に繋げるためには、スキルがとても重要だということを実感しました。また、1on1をやればやるほど相手も慣れてくるので、コミュニケーションの透明性が高まることを感じたほか、相手がよく話してくれるようになったというのは、大きく変わった点だと思います。

:「透明性が高まる」というのは、具体的にどのようなことでしょうか?

川嶋様:相手が本音を話してくれるようになったと思います。今までは、会話のキャッチボールが1往復で終わっていましたが、だんだんとそれが1往復から2往復以上になってくるし、話の内容も深くなりました。情報量が詰まった会話になったなと思いましたね。

:当トレーニングで学習されたことや、習得されたスキルなどは、1on1以外の場面ではどのように生かされていますか?

川嶋様:例えば、社内で発表会があり、審査や評価をする立場になることがよくあります。発表者のプレゼンテーションを聞いて、講評する前には質問タイムがあるのですが、その時にトレーニングで学んだスキルを生かせています。自分が思ったことを一方的に話すのではなくて、「そのときはどう考えましたか?」とか、「経験から何を学べましたか?」など、1on1の質問のスキルを使うことで、プレゼンが終わった発表者は、「自分ではこうプレゼンしたけど、実はこう思っていたんだな」みたいに、内省を促したり、新たな気づきを引き出すことができるようになりました。自分の質問の仕方や内容の質が上がったと思いました。

:相手の内省を促して気づきを引き出すという点で、1on1以外の場面でもスキルを活用されているということですね。

川嶋様:そうですね。あと、発表の内容が結構難しかったり、私の領域ではないものがほとんどなので、正直、具体的な内容が分からないプレゼンが多いんです。その中で、質問タイムで「質問してください」と言われても質問しにくかったのですが、1on1のスキルを使うことによって、先ほどの質問のように、質問の幅を広げることに非常に役立ちました。また、それを聞いている周りの講評者からも、「あの質問いいな」と後で言われたりしたこともあります。

「聴く」ことで信頼関係が醸成され、部下が能動的に変化

特に良かったこと

:当トレーニングを受けられて、ご自身にとって特に良かったことは、どのようなことでしょうか?

川嶋様:特に良かったことは、メンティとの信頼関係がとても強くなったことだと思います。それまで関係が悪かったわけはありませんでしたが、このトレーニングを行ったことで、お互いをよく知ることができたことと、私が話をよく聞くようになったことで、相手も「聞いてくれるな」と感じるようになり、そこから強い信頼感が生まれてきたので、それが一番大きいですね。そのような関係が築けると、仕事上でこちらから言わなくても仕事を拾ってくれたりとか、部下が私をみて「忙しくて大変そうだな」と思ったときには、「それ、私がやります」というように能動的に拾ってくれるようになりました。部下の皆さんが自然にそのような形になって、皆さんのモチベーションも高まったのが一番大きいところですね。

:冒頭のお話の中にもありましたが、上司の部下とのコミュニケーションが、「教える型」から「聴く型」に変化して、信頼関係が醸成され、部下の人たちが能動的に動くようになったということですね。

川嶋様:そうですね。そう感じました。

「これまで自分は話しすぎていた」と多くの管理職が気づく

研修メンバーの変化

:他の研修メンバーの皆様にはどのような変化が見られましたか?

川嶋様:人にもよると思いますが、大きな変化の一つは、「自分がそんなに話さなくていいんだ」ということと、「自分は話しすぎていたな」と思った人がほとんどだったことです。今まで、自分の思いを一方的に伝えているだけで、相手に考えさせていなかった。ティーチングですよね。それだと部下は考えないし、「待ち」の状態のままだなと。研修メンバーの皆さんはそれに気づいたようです。それに気づいたことで、相手の話を引き出すスキルを、うまく活用しなければならないと。

あと、これは私もそうですけど、研修メンバー同士の1on1の練習のとき、練習相手と担当業務が違うので、相手の仕事内容の細かいことまでは分からないことが多いのですが、分からなくても1on1って進められるなと。この気づきについても、研修メンバーの皆さんから多く聞かれました。

練習と本物体験をしなければ、1on1のスキルは高められない

1on1ミーティングを導入・定着させるための大切なポイント

:1on1を導入する企業は、今後ますます増えていくと思いますが、これから導入する企業に対して、1on1の導入や定着の上での大切なポイントについて、アドバイスをお願いします。

川嶋様:研修でスキルを学習することは大切なことですが、もっと大切なことは、1on1のセッション練習を行ったことでした。練習や経験を積むことで、自分なりの気づきが得られました。教科書の内容は表面的には理解していると思いますが、本当に理解しているかというと、研修を受けただけでは、理解したつもりになってるだけなんですよね。実際に1on1セッションをやってみると難しいですが、練習することで1on1の進め方が身についてきます。当たり前かもしれないですけれども、実践を積めば積むほど上手くなるのを実感します。本当にそこに尽きるな、と思っています。

:スポーツなどと同じで、1on1スキルも、練習回数と上達度合いには比例関係がありそうです。

川嶋様:「近道はない」ということですね。最初の数回のセッション練習は、教科書を見ながらセッションを進めるのですが、進め方に気を取られて相手の話があまり入ってこないんですよね。「次に何を言おう?」って考えてしまうので(笑)それが、何回も練習すると、型が自然に分かってくるので、やっとそこで相手の話を聞けるようになりました。相手の話を理解した上で、「こういうことだよね」って本当の意味でのリフレインもできるようになりますし、「次の質問はこうして、次は...」というように進め方の道筋が30分の中で光がハッキリと見えてくるんですよね、「こうだな」と。こういうことは、何回もやってみないと見えてこない。それができるようになるには、やはり練習しかないなと。

あとは、プロのメンターの方から1on1を受けた経験ですね。メンティ側の立場に立つという意味でもそうですし、スキルを盗むということでも非常に重要かなと思っています。それは自分がメンター役で行う練習セッションの経験ではなかなか培えないところで、上達する秘訣として大きかったと思うので、セッション練習とセットでぜひやっていただくと良いと思います。

:一つは複数回の1on1の練習をすること、もう一つはプロのメンターから1on1を受ける体験ですね。これが大切なポイントだと。

セッション練習回数について、「1on1実践トレーニング®︎」では、トレーニング期間中、標準で往復15回行うことになっていますが、今回は業務の都合で少し回数を減らして、往復9〜10回の練習セッションを行なっていただきました。トレーニングを終えられて、練習セッションの回数は、どのくらいが適量と思われますか?

川嶋様:個人的には、9回から10回が最低ラインかと思います。それより少ないと、たぶん、スキルが身につかないと思います。なので、最低でも10回はやるべきかと思いますね。中盤以降に学習する「経験学習モデル」とか「GROWモデル」になると、進め方が複雑になってくるので、トレーニング初期のセッション練習回数は少なめにしたとしても、中盤以降の「経験学習モデル」や「GROWモデル」のセッション練習回数は増やした方がいいですね。そしてトータルで、最低でも10回から12回程度のセッション練習を行うのが適量だと思います。

今後の組織開発・人材育成の取組み

:今後、1on1を含めた組織開発や人材育成について、どのような取り組みをされる予定か、差し支えない範囲で教えていただければと思います。

川嶋様:引き続き、全管理職で1on1をやっていこうということと、パーパス経営の取り組みを行なっているので、部署全体で事業のパーパスを全員で考えて、その浸透活動を行なっています。そしてその後の「行動」ですね。行動指針については、会社全体で決まっているものはあるのですが、これを踏まえて一人ひとりが「自分はどう行動していくのか」を考えてもらい発表してもらう、といった取り組みも行なっています。

外部事業者に期待すること

:今後、1on1の取組みの推進や定着させていくために、我々のような外部事業者に期待することをお聞かせください。

川嶋様:1on1セッション終了後の本音の評価です。1on1メンティである部下が上司の1on1を評価すると、自分が評価したと分かってしまうので、良い評価になってしまう可能性があります。忖度のない、本当のフィードバックと評価をプロのメンターを含む外部の方に行なってもらえるといいですね。直接的な内容はオブラートに包みながらも、改善のポイントを伝えることができると、本人の改善につながるのではないかと思います。

教えたくなる気持ちを抑えた1on1が、部下を能動的に変える

これから1on1ミーティングを行う管理職の方々へのメッセージ

:では、最後になりますが、これから1on1を行う管理職の方などに向けて、実践していく上でのアドバイスをお願いします。

川嶋様:自身が上司という立場に立つので、指示命令や教えたい衝動に駆られることがありますが、最初はそこを抑え、相手に考えさせることが大切だと思います。時間はかかるかもしれませんが、最初はゆっくりスタートし、一度軌道に乗れば部下が自発的に行動し始めます。

教えたくなる気持ちをこらえて、まずは部下の話を聞き、彼ら自身が考えるようになることが重要です。部下が自分で考え、行動できるようになるまでには時間がかかりますが、ぜひその時間をかけて支援してください。絶対に後悔しないばかりか、部下が自発的に動くことで上司も楽になり、部下のモチベーションやエンゲージメントも高まります。時間が足りないと思わず、部下としっかり向き合っていただきたいと思います。
(おわり)
写真右より、株式会社 NTTデータ 法人事業推進部 BPR推進室 川嶋 啓史 氏、(一社) 日本リレーショナルリーダーシップ協会(JRLA) 代表理事 林 英利
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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