2026/05/19
1on1立直し
1on1の質を高める鍵は「ものさし」にあり──支援者育成で進める組織開発の取り組み|キヤノン株式会社
キヤノン株式会社 人事本部 人材・組織開発センター 組織開発支援部
福與 一美 様・広瀬 英樹 様

| 事業内容 | 1937 年にカメラメーカーとして創業したキヤノンは、カメラの開発で培った光学技術を軸に多角化を進め、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの4つの柱でグローバルに事業を展開しています。テクノロジーとイノベーションによって、豊かな暮らしとサステナブルな未来の実現をめざしています。 |
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| 企業規模 | 165,547名(連結従業員数・2025年12月末現在) |
| 導入前の課題 |
1. 組織開発の支援者間における1on1実践の共通認識の明確化 |
| 導入サービス |
1on1傾聴力向上と社内展開力育成プログラム |
| 導入後の効果 |
本プログラムを通じて、1on1支援における共通の「ものさし」が整備され、支援者同士の対話やフィードバックが行いやすくなった。また、プロによる評価や動画振り返りを通じて、自身の傾聴スタイルを客観的に見直す機会が生まれ、今後の実践に向けた意識の向上につながっている。
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はじめに
1on1ミーティングの導入や活用が広がる中で、「管理職ごとにやり方が異なる」「支援の質にばらつきがある」といった課題を感じている企業も少なくありません。
キヤノン株式会社では、組織開発支援・人材開発を担う社内の14名の支援者(組織開発支援者)に対し、1on1や傾聴スキルを体系的に高め、社内で展開できる人材を育成することを目的として、「1on1傾聴力向上と社内展開力育成プログラム」を導入しました。
本プログラムは、キヤノン株式会社のご要望をもとに、JRLAが内容を設計・開発したものであり、組織開発支援者自身のスキル向上と社内展開力の強化を両立させることを狙いとしています。
本記事では、本プログラムの導入を担当され、かつ受講者としても参加された組織開発支援部のお二人に、導入の背景や取り組みの狙い、実施を通じた気づきについて伺いました。
組織開発支援者にとって「聴くこと」は “一丁目1番地”
──まず、組織開発支援部の役割について教えてください。
広瀬さん:
人事本部の中に組織開発支援部があり、我々は主に、組織に関する課題を抱える部門に対して、ワークショップや研修、相談対応などを通じて支援を行っています。また、新任課長向け研修では講師や個別フォローアップのための1on1ミーティングも担当しています。
福與さん:
その中で私たちは「支援者」として活動しているのですが、やはり「話を聴く」ということは、すべての起点になるものだと考えています。いわば、支援を行う上での “一丁目1番地”ですね。
個々の経験に基づいて行われていた1on1支援。共通の視点を持つ必要性
──今回の取り組みに至った背景には、どのような課題意識があったのでしょうか。
福與さん:
これまでも支援者それぞれが1on1や傾聴を実践してきましたが、どのように行っているかが支援者同士で共有されているわけではありませんでした。各自が学びながら実践している状況だったため、「今、自分たちはどのレベルにいるのか」を把握しづらいという面がありました。
また、課長向け研修の中で実施している1on1サポートについても、良い取り組みではあるものの、個々の進め方に委ねられている部分がありました。
──支援の質をより高めていくために、共通の視点が必要だったということですね。
福與さん:
はい。内部だけで評価するとどうしても主観的になりがちなので、外部のプロの視点で見ていただき、「ものさし」を揃えたいという思いがありました。

▲ インタビューに応える広瀬さん(写真左)と福與さん(写真中央)
選定の決め手は“柔軟な設計力”。自社に合わせたプログラム
──複数の提案の中で、今回のプログラムを選定いただいた理由を教えてください。
福與さん:
一番大きかったのは、こちらのやりたいことに対して柔軟に対応していただけた点です。既存のプログラムをそのまま提供するのではなく、私たちの話をしっかり聞いた上で、最適な形に設計していただけました。
広瀬さん:
他社のプログラムもそれぞれ特徴はありましたが、今回のように、プロメンターによる1on1体験や、実際のセッション動画を評価してもらうといった要素まで含めて、全体として設計されているものはあまり多くありませんでした。そういった点で「痒いところに手が届く」印象がありました。
「できているつもり」からの気づき。プロの視点と動画振り返りの価値
──実際にプログラムを受講されて、印象に残っている点は何でしょうか。
広瀬さん:
自分なりに「できているのではないか」と思っていた部分があったのですが、動画を撮ってプロの評価者に評価していただくことで、新たな気づきがありました。耳の痛いフィードバックもありましたが、「確かにそうだ」と受け止めることができたのは大きかったです。
福與さん:
私自身も、これまでのやり方にある種の固定観念があったことに気づきました。傾聴の中にもさまざまなアプローチがあることを学び、視野が広がったと感じています。
──動画での振り返りはいかがでしたか。
広瀬さん:
自分の1on1のセッションを客観的に見ると、想像以上に相槌が多かったり、こちらが主導してしまっている場面が見えてきました。普段は意識できていなかった点に気づけたのは大きかったです。
福與さん:
私は、テンポよく進めることを意識するあまり、相手が考える時間を十分に取れていなかったと感じました。沈黙を待つことの大切さを改めて実感しました。

▲「普段は意識できていなかった点に気づけたのは大きかった」と語る広瀬さん
共通の「ものさし」が生まれたことで、対話がしやすくなった
──今回の取り組みを通じて、支援者の皆さまの中で変化はありましたか。
福與さん:
「ものさし」ができたことは非常に大きいです。その基準に基づいてフィードバックができるようになり、支援者同士の対話もしやすくなりました。共通の理解があることで、受け取り方も変わってきたと感じています。

▲「『ものさし』ができたことは非常に大きい」と語る福與さん
今後の展開に向けて。支援者育成から組織全体へ
──今後の課題や展望について教えてください。
福與さん:
今回のプログラムを受けたメンバーは良いのですが、新しく加わるメンバーへの展開をどうしていくかは課題の一つです。せっかく整えた「ものさし」を維持し、広げていく必要があります。
広瀬さん:
今回得た知見をどのように社内に展開していくかもこれからのテーマです。1on1をどのように広げていくのか、今後検討していきたいと考えています。
1on1は組織開発の基盤。信頼関係を築くための重要な手段
──最後に、1on1や傾聴の位置づけについて、どのようにお考えですか。
福與さん:
1on1や傾聴は、組織開発の中でも基本となるものだと考えています。一対一でしっかり話を聴くことができるようになれば、それが組織全体の信頼関係の向上にもつながっていくのではないでしょうか。
広瀬さん:
相互理解を深め、信頼関係を築いていくための重要な手段の一つだと捉えています。その基盤となるスキルやマインドを、今後も大切にしていきたいですね。
(聞き手:JRLA代表理事 林 英利)
まとめ
キヤノン株式会社では、1on1や傾聴を単なるスキルとしてではなく、組織開発を支える重要な基盤として捉え、支援者や管理職の育成に取り組んでいます。
今回のプログラムを通じて得られた共通の「ものさし」や内省の機会は、今後の社内展開においても大きな基盤となっていくことが期待されます。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。



