2025/04/23
1on1ミーティング
形骸化する1on1の処方箋

多くの企業で導入されている「1on1ミーティング」。本来は上司と部下が信頼関係を築き、成長支援や課題解決を図るための時間のはずが、実際には「時間の無駄」「話すことがない」といった声も聞こえてきます。
なぜ1on1がうまく機能しないのでしょうか? 今日はそれぞれの立場から考えてみました。
上司視点:指導か傾聴か、揺れるスタンスと“あり方”
上司の多くが1on1を「評価」や「業務指示の場」にしてしまいがちです。「最近どう?」と話を始めても、ついKPIや成果の話に戻ってしまう。先日セッションをした営業リーダーの方は、「部下の相談にのっていたつもりが、気づけば“指示会”になっていた」と振り返ります。
本来、1on1は部下が自分の考えや気持ちを安心して話せる「場」であるべきです。そのために必要なのは、“正解を与える上司”ではなく、“支える伴走者”としてのスタンス。たとえば「どうしたらいいと思う?」「今の話をもう少し詳しく教えて」といった問いかけが、部下の内省を促します。
さらに大切なのは、話を「聞くこと」に集中する姿勢。スマートフォンやPCを見ながらの1on1は、相手に「話す価値がない」と感じさせてしまいます。1on1に臨む際は、時間と心を開いて向き合う覚悟が、上司としての“あり方”です。
部下視点:若手もベテランも、1on1にどう向き合うか?
部下側にも「何を話せばいいのかわからない」「どうせ変わらない」という戸惑いや諦めがあります。特に若手社員は、「こんなことを話してもいいのか」「評価に響くのでは」と不安になりがちです。
一方で、ベテラン社員が1on1を形式的に捉えてしまうケースも少なくありません。あるベテランは社員の方は「これまで成果で評価されてきたのに、今さら雑談なんて」と違和感を抱いていました。しかし、日々の業務やチームへの思いを伝える中で、業務改善につながるアイデアが生まれるようになったといいます。
部下として1on1を有効にするには、「自分のための時間」と捉え、事前に話したいテーマを持って臨むことがポイントです。たとえば、「最近悩んでいること」「今後のキャリアについて」「他部署との連携の悩み」など、何でも構いません。話すことで整理され、上司との関係性も深まるでしょう。
管理職・組織視点:仕組みと文化の両輪で支える
効果的な1on1を組織に根づかせるには、現場任せにせず、組織としての支援体制や仕組みづくりが不可欠です。
▷1on1が機能するための仕組みづくり
・目的とスタンスの共有:1on1は評価ではなく、支援の時間であることを明文化
・トレーニングの実施:上司には傾聴・質問スキル、部下には話す内容のヒントを提供
・テンプレートやガイドラインの整備:話しやすさや継続性をサポート
・振り返りとフィードバックの導入:定期的に運用状況をチェックし、改善につなげる
まとめ:1on1は「文化」として育てるもの
1on1は単なる面談時間ではなく、信頼関係を築き、チーム力を高めるための文化的な取り組みです。個人任せではなく、組織として「なぜやるのか」「どう使うのか」を共有し、形だけで終わらせない工夫が求められます。
「やらされているもの」から、「信頼関係を築くための文化」へと1on1が進化することで、組織全体のコミュニケーションはより豊かで、強く、しなやかなものになります。
組織の1on1改善に興味のある方は、以下もご参照ください。
管理職の1on1面談スキルを高める「1on1実践トレーニング®︎」
執筆:田部井 茉里メンター