1on1が変わる心理的安全性の力

「うちの1on1、正直あまり意味を感じないんです」 そんな声を聞くことはありませんか?
定期的な1on1の導入が進む一方で、その本質が置き去りにされ、形骸化してしまうケースも少なくありません。その背景には、話の中身や頻度以前に、「心理的安全性」という土台があるかどうかが大きく関わっています。
1on1が機能しているか。それは、部下が「この場では安心して本音を話せる」と感じられるかにかかっています。つまり、心理的安全性の担保はリーダーの責任であり、その鍵は“信頼”という関係性の質にあるのです。
なぜ「心理的安全性」が1on1に不可欠なのか?
心理的安全性とは、「チームの中で自分らしくいられる」「間違いや弱みをさらけ出しても否定されない」という感覚のこと。Googleのリサーチでも、高パフォーマンスが上がっているチームに共通する要素として注目されてきました。
1on1は、部下の話を引き出し、共に考えるための貴重な対話の場。その中で、もし部下が「どう思われるかが気になって本音を言えない」のであれば、1on1は単なる報告の時間に成り下がります。
心理的安全性が担保されて初めて、学びや気づき、関係性の進化が生まれるのです。
「信頼」はリーダーから始まる
心理的安全性は、相互の信頼関係の上にしか築かれません。そして、その第一歩は、リーダー自身が“信頼を差し出すこと”です。
例えば、1on1でこんな問いかけをしていないでしょうか?
「最近、何か困ってることはない?」
「何か改善してほしいことある?」
一見よさそうに見える問いも、関係性ができていなければ「様子伺い」や「監視」と受け取られる可能性があります。
それよりも、まずはリーダー自身が「最近こんなことで悩んだ」「自分にも課題がある」といった“開示”をすることで、部下の安心感を生むことができます。
信頼される前に、信頼する。この順番が重要です。
多様性と個別性への配慮が、1on1の質を高める
心理的安全性を語るとき、もうひとつ意識したいのが「部下一人ひとりの感じ方は違う」という視点です。 性格、経験、文化的背景、現在のコンディション——それぞれの違いが、安心できる“条件”を変えます。
つまり、型通りの1on1では限界があるということです。 ある人にとっては「話を遮らないこと」が安心であり、別の人にとっては「時間を厳密に守ること」が安心だったりします。
リーダーに求められるのは、個別性への観察と配慮です。小さな気づきや態度が、大きな信頼につながります。
まとめ──対話を育てるのは、信頼という土壌
心理的安全性は、テクニックではなく関係性の中で育まれるものです。 1on1を「行う」こと自体が目的になっていないか、ぜひ立ち止まって見直してみてください。
信頼は一朝一夕には築けません。しかし、日々の関わりの積み重ねでしか生まれないからこそ、リーダーの在り方が問われます。
本音が出る場には、必ず信頼があります。 そしてその信頼は、まず「安心できるあなた」がいることから始まるのです。
執筆:田部井 茉里 メンター
リーダーとして信頼を生む1on1に興味のある方は、以下ご参照ください。
管理職の1on1面談スキルを高める「1on1実践トレーニング®︎」ご紹介ページ

前回のブログでは「形骸化する1on1の処方箋」として、1on1に関わる三者(上司・部下・組織)の視点から、形骸化を防ぐためのポイントを整理しました。今回はその続編として、「質を高める問いの設計」に焦点をあてます。
1on1は単なる対話の場ではなく、信頼と成長を育む機会。そこに投げかける「問い」こそが、その質を大きく左右します。
上司の立場:「意図ある問い」が関係性をつくる
上司が1on1でつい陥りがちなのは、「進捗確認」や「アドバイスの提示」に終始するスタイル。しかし、対話の主導権を上司が握りすぎると、部下の内省や主体性を妨げることもあります。
質を高めるには、「相手の思考を深める問い」がカギとなってきます。たとえば:
- 最近、どんな瞬間にやりがいを感じましたか?
- 今、どんなことにモヤモヤしていますか?
- あえて振り返ると、どんな学びがありましたか?
問いには“相手を信じて任せる”姿勢がにじみ出てくるもの。その意図を持った問いは、単なる会話を“信頼の対話”に変えていきます。
部下の立場:「答えを出す」より「考える」プロセスを大切に
1on1を「評価の場」「正解を出す場」と捉えてしまうと、本音は出しにくくなってしまいます。問いに対してすぐに答えを出す必要はありません。むしろ、「考えるプロセス」そのものが自身の成長に繋がっていきます。
問いを受けたときに、すぐに答えが出ないと感じたら、それをそのまま伝えてみましょう。「正直まだ整理できていません」「考えるきっかけになります」など、自分の状態を共有することが、上司との対話の深まりにつながります。
組織の立場:問いの文化が、対話の質を底上げする
問いの力は、個人間の対話にとどまりません。チームや組織に「問いの文化」があるかどうかは、1on1の質にも大きく影響します。たとえば、会議や日常のやりとりの中で、
- その意図はなんですか?
- 私たちはどこを目指しているんでしょう?
- そもそも、これって何のためにやってる?
といった問いが自然に交わされる文化が根づけば、1on1もまた、表面的な進捗確認から抜け出し、探究と成長の場になります。
まとめ:問いの質が、対話の深さを決める
良い問いは、相手の中にある「まだ言語化されていない思い」に光を当てます。1on1の質を高めるとは、つまり“問いの質を高める”ということ。問いは、誰かの答えを引き出すだけでなく、自分自身の在り方も映し出してくれます。
問いを磨くことは、上司・部下・組織、すべての立場にとって、信頼と成長のベースづくりと言えるでしょう。
執筆:田部井 茉里 メンター
※ 1on1改善に興味のある方は、以下ご参照ください。
管理職の1on1面談スキルを高める「1on1実践トレーニング®︎」ご紹介ページ
※質問力を高めたい方は、こちらの書籍もどうぞ

多くの企業で導入されている「1on1ミーティング」。本来は上司と部下が信頼関係を築き、成長支援や課題解決を図るための時間のはずが、実際には「時間の無駄」「話すことがない」といった声も聞こえてきます。
なぜ1on1がうまく機能しないのでしょうか? 今日はそれぞれの立場から考えてみました。
上司視点:指導か傾聴か、揺れるスタンスと“あり方”
上司の多くが1on1を「評価」や「業務指示の場」にしてしまいがちです。「最近どう?」と話を始めても、ついKPIや成果の話に戻ってしまう。先日セッションをした営業リーダーの方は、「部下の相談にのっていたつもりが、気づけば“指示会”になっていた」と振り返ります。
本来、1on1は部下が自分の考えや気持ちを安心して話せる「場」であるべきです。そのために必要なのは、“正解を与える上司”ではなく、“支える伴走者”としてのスタンス。たとえば「どうしたらいいと思う?」「今の話をもう少し詳しく教えて」といった問いかけが、部下の内省を促します。
さらに大切なのは、話を「聞くこと」に集中する姿勢。スマートフォンやPCを見ながらの1on1は、相手に「話す価値がない」と感じさせてしまいます。1on1に臨む際は、時間と心を開いて向き合う覚悟が、上司としての“あり方”です。
部下視点:若手もベテランも、1on1にどう向き合うか?
部下側にも「何を話せばいいのかわからない」「どうせ変わらない」という戸惑いや諦めがあります。特に若手社員は、「こんなことを話してもいいのか」「評価に響くのでは」と不安になりがちです。
一方で、ベテラン社員が1on1を形式的に捉えてしまうケースも少なくありません。あるベテランは社員の方は「これまで成果で評価されてきたのに、今さら雑談なんて」と違和感を抱いていました。しかし、日々の業務やチームへの思いを伝える中で、業務改善につながるアイデアが生まれるようになったといいます。
部下として1on1を有効にするには、「自分のための時間」と捉え、事前に話したいテーマを持って臨むことがポイントです。たとえば、「最近悩んでいること」「今後のキャリアについて」「他部署との連携の悩み」など、何でも構いません。話すことで整理され、上司との関係性も深まるでしょう。
管理職・組織視点:仕組みと文化の両輪で支える
効果的な1on1を組織に根づかせるには、現場任せにせず、組織としての支援体制や仕組みづくりが不可欠です。
▷1on1が機能するための仕組みづくり
・目的とスタンスの共有:1on1は評価ではなく、支援の時間であることを明文化
・トレーニングの実施:上司には傾聴・質問スキル、部下には話す内容のヒントを提供
・テンプレートやガイドラインの整備:話しやすさや継続性をサポート
・振り返りとフィードバックの導入:定期的に運用状況をチェックし、改善につなげる
まとめ:1on1は「文化」として育てるもの
1on1は単なる面談時間ではなく、信頼関係を築き、チーム力を高めるための文化的な取り組みです。個人任せではなく、組織として「なぜやるのか」「どう使うのか」を共有し、形だけで終わらせない工夫が求められます。
「やらされているもの」から、「信頼関係を築くための文化」へと1on1が進化することで、組織全体のコミュニケーションはより豊かで、強く、しなやかなものになります。
組織の1on1改善に興味のある方は、以下もご参照ください。
管理職の1on1面談スキルを高める「1on1実践トレーニング®︎」
執筆:田部井 茉里メンター

1on1ミーティングは、リーダーと部下の関係を強化し、信頼を築くための重要な機会です。しかし、部下との価値観の違いや仕事の進め方のギャップにより、うまく機能しないこともあります。
今回は苦手な部下との1on1を成功させるためのステップを考えていきます。
なぜ部下の考えを受け入れられないのか?
1on1ミーティングでは、リーダーが部下の意見を受け入れることが重要ですが、どうしても受け入れられない場合があります。その理由の多くは、価値観の違いや仕事の進め方の違い、過去の経験に基づく先入観などによるものです。
たとえば、「部下の仕事の進め方が自分のスタイルと違いすぎる」と感じると、無意識のうちにその意見を拒否してしまうことがあります。しかし、1on1の場でリーダーが部下の話をシャットアウトしてしまうと、部下は自分の考えを話すことを諦め、結果的に関係性の悪化を招いてしまします。
1on1で部下の考えを理解する方法
苦手な部下と1on1を成功させるためには、「受け入れる」前に「理解する」ことが大切です。すぐに納得できなくても、まずは部下の話に耳を傾けましょう。
例えば、「それは違っているだろう」と思うことでも、最初から否定せず、「どういう考えなのか?」を冷静に聞く姿勢を示します。また、「どうしてそう思うのか?」「もっと詳しく教えて」と尋ね、部下の視点を知る質問をしてみるのもいいでしょう。
すべてを受け入れる必要はなくても、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と思える部分を見つけ、共感できる部分を探すということにもチャレンジしてみましょう。
こうした姿勢を持つことで、部下も安心して自分の考えを伝えられるようになります。
リーダーが部下を信頼することの重要性
そもそも、リーダーの役割は部下に部署の成果へ貢献してもらうことです。そのためには、リーダー自身が部下を信頼し、受け入れる姿勢を持つことが不可欠です。
部下が本来の力を発揮するには、「自分の考えを受け入れてくれる」と感じられる環境が必要です。リーダーが最初から「苦手な部下」と決めつけて距離を置くと、部下はますます意欲を失い、結果として部署全体の成果にも悪影響を及ぼします。
逆に、リーダーが信頼を示し、部下の意見に耳を傾けることで、部下は前向きに仕事に取り組めるようになります。苦手な部下との1on1は難しく感じるかもしれませんが、「相手の強みを引き出すこと」を意識すれば、リーダー自身の成長にもつながってくるでしょう。
部下の成長を支援するリーダーの姿勢
部下を「受け入れる」ことの先にあるのは「育てる」ことです。1on1は、部下の短所を指摘する場ではなく、強みを引き出し成長を促す場でもあります。
- リーダーが部下の可能性を信じることで、部下の成長を後押しできる
- 苦手な部下であっても、長期的な視点で「どのような成長を期待するか」を考える
- 成長のためのフィードバックを提供し、成功体験を積んでもらうことで自信を持たせる
リーダー自身が「部下の成長を支援する存在」であると意識することで、1on1がより実りある時間になり、組織全体の成果向上にもつながります。
まとめ
苦手な部下との関係性を改善し、1on1をより充実したものにするために、まずは「理解する姿勢」「信頼する意識」「成長を支援する視点」を持つことが重要です。
1on1を単なる対話の場ではなく、部下の成長とチームの成果を高める機会として活用し、前向きな関係を築いていきましょう。
執筆:田部井 茉里 メンター

定年延長や多様な働き方が認められる昨今、年上部下・年下上司の問題も多く聞かれるようになってきました。年上の部下を持つリーダーにとって、部下との関係構築はチームの成果に直結する重要な要素です。
特に1on1の場は、個別に対話する貴重な機会であり、効果的に活用することで信頼関係を深め、協力関係を築くことができます。今日は、1on1を通じて年上の部下との関係性を構築するための方法を、3つの観点から考えてみます。
よくある上手くいかない事例
多くのリーダーが直面する課題の一つは、年上の部下との1on1が効果的に機能しない場合です。主な事例には、以下のようなパターンがあります。
- コミュニケーションの壁:年上であるために、部下がリーダーに対して遠慮し、本音を言いにくい状況が生じることがあります。
- 期待の不一致:リーダーと部下の期待が異なる場合、1on1が目的を達成せず、不満や誤解を生むことがあります。
- 過剰な指導:リーダーが年上の部下に対して、過剰に指導やアドバイスを行い、相手を過度に扱いすぎることがあります。
これらの事例は、信頼関係の構築や成果に悪影響を及ぼす可能性がありますが、適切なアプローチで克服することが可能です。
1on1を利用した解決方法
1on1を成功させるためには、以下のポイントに注意することが重要です。
- オープンな雰囲気の醸成:1on1において、オープンで非公式な雰囲気を作り出しましょう。年上であることによる隔たりを感じることがないように、気軽に話せる環境を整えます。
- 対等な関係の強調:年齢や役職に関係なく、相手の意見やフィードバックを尊重し、対等な関係を築く意識を持ちます。年上部下の視点や経験を尊重する姿勢が重要になります。
- 共通の目標の確認:チームの目標や役割を明確にし、それらを達成するためにどうやって協力・恊働できるかを年上部下と共に考えましょう。共通の目標を持つことで、信頼関係が深まります。
これらのアプローチを通じて、1on1を有効に活用することで、年上の部下との関係性を強化し、チームのパフォーマンスを向上させることが可能になってきます。
年上部下の心理的安全性と恊働していく
最後に、年上部下との1on1を通じて心理的安全性を確保し、恊働関係を築いていく方法について考えます。
- オープンなコミュニケーションの奨励:年上部下が安心して意見を述べられるように、オープンで非批判的なコミュニケーションを心がけます。年上であることによる障壁を取り除くために、部下の視点を尊重し、彼らの声を積極的に取り入れます。
- 元リーダーであった部下との協力:年上部下との協力には、彼らの経験や視点を活用することが重要です。彼らが持つ知識や洞察をチーム全体の成果に生かすことで、彼らもチームの一員としての誇りを感じることができます。
これらのアプローチにより、リーダーは年上部下との関係を強化し、チーム全体の協力関係を深めることができます。
1on1を通じて、個別のニーズや目標に焦点を当てることで、部下との信頼と共感を築き上げ、持続可能な成功をもたらすことができるでしょう。
まとめ
関係性の構築は時間と努力を要しますが、適切なアプローチとコミュニケーションの強化により、リーダーと年上部下との間に建設的で成果を生む関係を築くことが可能です。
執筆:田部井 茉里 メンター

2024年も後わずかになりました。
リーダーのみなさんが取り組まれている1on1ミーティングですが、今日は2025年始の1on1を有効に使うためのポイントをお伝えしようと思います。
新しい年のスタートに行われる1on1ミーティングは、チームメンバーとリーダーの双方にとって重要な節目となる時間です。この機会を最大限活用するために、どのようなアプローチを取るといいでしょうか?
年内にできなかったことや課題の洗い出し
年始の1on1では、前年を振り返り、達成できなかったことや抱えていた課題を、洗い出すことが重要です。ただし、この振り返りを行う際には以下の点に注意しましょう。
- 批判的になりすぎない:達成できなかった理由を探る際に、感情的な批判に陥らないように注意しましょう。 過去の失敗は未来の学びに変えられます。
- 具体性を重視する:漠然とした表現ではなく、具体的な課題や障害を特定することで、今後の改善策が見えやすくなります。
- ポジティブなトーンを保つ:達成できた部分や進歩があった点も同時に評価することで、建設的な議論が可能になります。
年明けから年度末に向けての計画
新しい年の目標設定や、年度末までに達成したいことを話し合う際には、以下のポイントを意識しましょう。
- 現実的かつ挑戦的な目標設定:メンバーのスキルや経験を考慮しながら、少し背伸びが必要な目標を設定することで成長を促すことができます。
- 短期と中長期のバランスを取る:年度末までに達成することだけでなく、この1ヶ月以内に取り組む具体的な行動を明確にしましょう。
- 優先順位の確認:チームや個人のリソースには限りがあります。どの目標が最も重要かを明確にし、エネルギーを集中させる領域を定めましょう。
年始の1on1の有効な使い方
この1on1を単なる目標設定の場にするのではなく、メンバーのモチベーションを高める機会にします。
- 感謝を伝える:年初に感謝の気持ちを伝えることで、信頼関係を強化し、ポジティブなスタートを切ることができます。
- キャリアや個人の成長にも触れる:仕事だけでなく、メンバー個人がどのように成長したいのかを確認することで、より深い信頼関係を築けます。
- オープンなコミュニケーション:1on1はリーダーからの一方的な指示ではなく、対話の場です。メンバーが率直に意見を述べられる環境を整えましょう。
- リーダーとしての模範を示す:リーダー自身も目標や成長の方向性を共有することで、率直なコミュニケーションを促し、チームの一体感を高めます。
まとめ
年始の1on1は、過去の振り返りと未来への計画を効果的に組み合わせることで、メンバーの成長とチームの成果を最大化する絶好の機会です。
振り返りを前向きに捉え、現実的かつ挑戦的な目標を設定し、メンバー一人ひとりのモチベーションを高める場にすることで、1年の良いスタートを切ることができます。
さらに、リーダー自身が模範となり、信頼関係と一体感を深めることが、チーム全体の成功につながります。
執筆:田部井 茉里 メンター

先日「1on1面談✖️コーチング」という座談会に参加させていただきました。
その際、1on1面談に苦戦されている方へ向けて・・ということで、コーチング・メンタリングでご一緒している方々から出たのは、「必ず、部下にはすっきりした気持ちで面談が終わるように心がけている」「諦めずに継続することが大事、うまくいかないときには相手に聞いてみる」「今、感じていることを聞いてみる、確認し合ってみることで次に繋がる」など、コーチングマインドに通じるお話がありました。
今日はあらためて、1on1ミーティングがうまくいかなかった時の対処法について考察してみます。
1on1ミーティングがうまくいかなかった時の対処法
1. 振り返りを行う
何が問題だったのかを分析します。コミュニケーションがスムースではなかったのか、期待する成果に届かなかったのか、リソースやサポートが不足していたのかなど、具体的な原因を特定しましょう。上司が何を伝えたいかの準備より、うまくいかなかった真因を探る振り返りの時間を取ることも大切です。
2. フィードバックを得る
ミーティングの相手にフィードバックをお願いし、自身が気づかなかった問題点や改善の機会について意見をもらうことも有効です。うまくいかなかったなら、その相手に真摯に聴いてみる・・・ここではオープンな姿勢が重要です。上司のこうした姿勢は、信頼関係を深め、問題解決に向けた建設的なプロセスを進めることができるようになります。
3. 次回の1on1で改善策を共有
フィードバックを受けた後、次回の1on1ミーティングで、そのフィードバックに基づいた改善策を共有します。改善策が見つからない場合も、改善策を見つけるプロセスを一緒に進めることも大事です。「今、何がわからないのか」や「どの部分が停滞しているのか」を率直に共有し、次回までに共に考える課題を明確にしてもいいでしょう。また、今どう感じているのかを確認し合うことで、透明性を保ちながら、双方が納得できる次に繋がるステップを踏むことができます。
4. ミーティングの目的を再確認する
1on1ミーティングの目的が不明確だったり、双方で異なっていた場合、期待がズレることがあります。目的を明確に再確認し、共通のゴールを設定することが必要です。また具体的な改善策が見つからない場合は、共通の目標の再設定が必要かもしれません。より短期的で具体的な目標を再設定し試してみる・・例えば、「次回の1on1までに、週に1回進捗報告を行う」「3つのタスクを重点的に取り組む」など、進行状況を測定できる、小さなゴールを設定するのも効果的ではないでしょうか。
5. 信頼関係の再構築
もし信頼関係に問題があると感じた場合は、1on1ミーティングの外でも積極的にコミュニケーションを取り、相手の考えや感情に寄り添う姿勢を示すことが重要です。また1on1の頻度やミーティング形式が適切か見直します。短すぎたり、頻繁すぎたりしていないか、また、対面かリモートかも相手のスタイルに合わせて調整しましょう。こうした心理的安全性を高める配慮は、信頼関係の再構築に効果的です。
6. 外部サポートの利用
必要に応じて、コーチングやメンタリングのスキルを磨くために、トレーニングを受けることも有効です。特に相手のモチベーションや成長をサポートするスキルが必要な場合、コーチングスキルの向上は大きな助けになります。
まとめ
いかがでしょうか? 時には、解決策を見つけるプロセス自体が試行錯誤を伴うものです。
完全な解決策がなくても、小さな改善や一時的な対応策を試してみる、そういった諦めない姿勢が重要です。どの手段が効果的かを共に確認しつつ進めることで、徐々に最適な解決策に近づけることができます。
そして、他の同僚、専門家、またはコーチングプログラムを導入して、第三者の視点を得ることも有効です。異なる視点が問題解決の突破口になることがあります。
執筆:田部井 茉里 メンター

先日、コーチングが1on1ミーティングに有効だとよく言われているが、コーチングを使えるのと使えないのとではどのような違いが出てくるのか、またコーチングセッションと1on1の違いがあるとすればどういうものか、という考察の機会をいただきました。
私は1on1ミーティングにコーチングの要素は必要だと思っていますが、改めて今日はどのように有効か、そして1on1で一番大事なことは何か、を考えていきます。
コーチングのスキルをどのように1on1ミーティングで使う?
1on1ミーティングは、チームメンバーとの個別の対話を通じて、その人の成長をサポートし、業務の進捗を確認する重要な機会です。
このミーティングが効果的であるためには、コーチングのスキルを適切に活用することが不可欠です。
コーチングのスキルを1on1で使う際には、以下のような要素を取り入れると効果的です。
質問力の活用
コーチングでは、単に情報を伝えるのではなく、相手が自分で気づくように導くことが重視されます。
効果的な質問を通じて、相手が自分の考えを深める手助けをします。
例えば、「この課題に対してどのようなアプローチを考えていますか?」という質問を投げかけることで、相手自身が問題解決の方法を考え出す機会を提供します。
フィードバックの提供
コーチングにおいては、具体的で建設的なフィードバックが重要です。
フィードバックを通じて、相手が自己改善のための具体的なステップを理解しやすくなります。
「あなたのプレゼンテーションは非常に明確でしたが、スライドにもう少しビジュアルが加えられたら、さらに効果的になるでしょう」というように、具体的な改善点を示すことが大切です。
目標設定とアクションプランの策定
1on1では、相手と共に具体的な目標を設定し、その達成に向けたアクションプランを策定することが求められます。
コーチングのアプローチを使い、相手が目標に対する意識を高め、自分自身で行動計画を立てるサポートを行います。
「次の1ヶ月で達成したい目標は何ですか?そのためにどのようなステップを踏んでいきますか?」といった質問を通じて、目標に対する具体的なアクションを引き出します。
コーチングセッションと1on1ミーティングの違い
コーチングセッションと1on1ミーティングは、実際には異なる目的とアプローチがあります。
コーチングセッションは、一般的に特定のスキルや行動の改善を目的とし、コーチとクライアントとの対話を通じて、深い洞察や変革を促進するものです。
一方、1on1ミーティングは、上司と部下の個別の対話を通じて、業務の進捗確認や問題解決、パーソナルなサポートを行うことが目的です。
コーチングセッションでは、通常、以下のような要素が重要視されます。
深い自己探索: クライアントが自身の価値観や目標を掘り下げるための対話が行われます。
長期的な成長: 特定のスキルや行動の改善に向けた長期的な戦略やプランが策定されます。
非指示的なアプローチ: クライアントが自分自身で答えを見つけることを促進するため、コーチは質問や対話を中心に進めます。
一方、1on1ミーティングでは、以下の要素が重視されます。
業務の進捗確認: 日常的な業務の進捗や問題点を把握し、必要なサポートを提供します。
短期的な課題解決: 現在の業務上の問題や課題を迅速に解決するための対話が行われます。
指示的なアプローチ: 必要に応じて、具体的な指示やアドバイスが提供されることがあります。
1on1で一番大事なこと
私は、信頼関係の構築とゴールの共有は、心理的安全性の確保に直接つながる重要な要素だと考えています。
心理的安全性の確保された場作りがなされると、部下は自分の悩みや困難な状況を率直に話しやすくなり、上司もより効果的にサポートすることができます。
信頼関係の構築
心理的安全性は、メンバーが自分の意見や感情を自由に表現でき、間違いや異なる意見を共有しても否定されないと感じる環境を指します。信頼関係が築かれていると、相手は安心して自分の考えを表現でき、ミーティングでのコミュニケーションがオープンになります。
ゴールの共有
ゴールを共有することは、相手に対して明確な期待と目的を伝えることです。これにより、相手は自分が何を期待されているのかを理解し、その役割に安心感を持つことができます。明確なゴールは、曖昧さを排除し、心理的安全性を高める一助となります。
心理的安全性のメリット
- 発言の自由 : 信頼関係とゴールの共有により、相手は意見やアイデアを気兼ねなく発言できるようになります。
- 挑戦への意欲 : 安全な環境では、メンバーは新しいことに挑戦しやすくなり、失敗を恐れずに行動できます。
- 協力的な姿勢 : 心理的安全性が確保されることで、メンバー間の協力やサポートが促進され、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。
信頼関係の構築とゴールの共有は、心理的安全性を確保するための基盤であり、これが1on1ミーティングの成功に不可欠な要素となります。
心理的安全性が確保された環境では、相手は安心して自分を表現し、ミーティングがより効果的で建設的なものになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
1on1ミーティングは、信頼関係を基盤にしながら、コーチングのスキルを活用して相手の成長をサポートし、業務の効率を高めるための重要な場といえます。
コーチングのアプローチを取り入れ、1on1ミーティングをさらに効果的なものにしたい方はこちらもご参照ください。

仕事と生活の両立を図る、ワークライフバランスの考え方が主流となってきましたが、最近では、ワークライフインテグレーションの浸透を図り、エンゲージメント向上を目指す組織も増えてきているようです。
ワークライフバランスとワークライフインテグレーションの違いを一言で説明すると、ワークライフバランスは仕事とプライベートを分けてバランスを取ること、ワークライフインテグレーションは仕事とプライベートを調和させて一体化させることと言えるかと思います。
ワークライフインテグレーションの浸透は、従業員の働き方を柔軟にし、仕事とプライベートの調和を実現することで、組織全体のパフォーマンスと幸福度を向上させる効果があります。
今日は1on1でどのようにアプローチすれば、ワークライフインテグレーションを組織に浸透させることができるか考えていきます。
ワークライフインテグレーションとは
まずはワークライフインテグレーションとはどういうことか、確認していくことから始めましょう。
・基本概念
ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートをうまく調和させて、一体化させる考え方です。つまり、仕事と個人生活を切り離すのではなく、両方を組み合わせて互いに補完し合うようにすることであることを、従業員に理解してもらいましょう。
・具体的な例
例えばリモートワークを活用し通勤時間を減らし、その時間を家族と過ごす時間や趣味に使うことができます。また勤務時間を柔軟に調整することで、子供の学校行事に参加したり、スポーツや健康管理のための時間を確保することも可能です。
・技術の活用
クラウドサービスやオンラインツールを使えば、どこでも仕事ができるようになります。これにより、オフィスに縛られることなく、自由な働き方が実現できます。
・成果重視の働き方
ワークライフインテグレーションでは、勤務時間ではなく成果に基づいて評価されます。これにより、従業員は自分のペースで働きながら、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなります。
ワークライフインテグレーションの効果を上げるための1on1アプローチ
では、どのように1on1でアプローチしていくのが効果的でしょうか?
・個別のニーズの把握
従業員一人ひとりのニーズやライフスタイルに応じたアプローチを取ることが重要です。1on1で具体的なニーズや希望を聞き取り、カスタマイズされたサポートを提供します。
・具体的な目標設定
ワークライフインテグレーションを実現するための具体的な目標を設定します。例えば、リモートワークの頻度や柔軟な勤務時間の具体的なプランなどを一緒に考えます。
・実行可能なプランの作成
従業員と一緒に、ワークライフインテグレーションを実現するための具体的なプランを作成します。これには、リモートワークの日程や柔軟な勤務時間の調整方法、技術ツールの活用 方法などが含まれます。
・定期的なフォローアップ
1on1ミーティングを定期的に行い、従業員の進捗や課題をチェックします。必要に応じてプランを修正し、さらなるサポートを提供します。
・フィードバックの提供
ワークライフインテグレーションの取り組みに対するフィードバックを積極的に提供します。ポジティブなフィードバックや改善点についても話し合い、従業員のモチベーションを高めます。
・リソースの提供
従業員がワークライフインテグレーションを実現するためのリソースやツールを提供します。例えば、リモートワーク用の機材やオンラインツールのトレーニングなどをサポートします。
実践例
実践例も挙げてみましょう。
・スケジュールを柔軟に対応
「あなたの希望に合わせて、毎週金曜日はリモートワークの日にしてみましょうか?」
・テクノロジーの活用
「必要なオンラインツールやリモートアクセスの設定をサポートしますので、困ったことがあればいつでも相談してください。」
・目標と成果の明確化
「今月のプロジェクトの成果目標を明確にし、それに向けてどう取り組むかを一緒に考えましょう。」
このように、具体的な説明と実践的なサポートを組み合わせることで、ワークライフインテグレーションの効果を最大化することができます。
まとめ
いかがでしょうか?
このように1on1でアプローチすることで、ワークライフインテグレーションを組織に浸透させ効果を上げていくことができます。
そして重要なのはワークライフインテグレーションを支える、柔軟な文化を職場に浸透させていくことと言えるかもしれません。
上司自身であるあなたが模範を示し、柔軟な働き方を実践することで、従業員もそれに倣うようになるのではないでしょうか。
リーダーとしてご自身の1on1改善に興味のある方は、以下もご参照ください。
執筆:田部井 茉里 メンター