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事実を事実として見る

事実を事実として見る。

単純なことのようですが、とても大切で、時にとても難しいことでもあります。

特に逆境で自分が追い詰められていたりしているとつい、過度に悲観的あるいは楽観的になってしまいます。

居酒屋経営者としてコロナ禍で悪戦苦闘し心が不安定になっている中で、事実を事実としてみることの難しさを痛感しています。


相関関係と因果関係

弊社店舗の社員の事例です。

その社員はいわゆる流れ板前で様々な職場を転々として、ウチに中途で入社してきました。

その社員は私が店舗を訪問して彼と顔を合わせると、なぜか大体いつも機嫌悪く面倒くさそうな態度をするのです。

「何か、私か会社に不満があるんだな。いつか突然辞めるか、問題を起こすかもしれない」と心配していました。

しかし、後日判明したのは、私がその店を訪問するのが、ちょうど彼の休憩時間明けと重なっており、仮眠後で寝起きの悪い彼は態度悪く見えていただけということでした。

元々、いくつもの職場を流れてウチにきたという先入観もあり、「いつか問題を起こすのではないか」と私は捉えてしまっていたのです。

事実は、私が訪問した時に彼の態度が不機嫌に見えたということ。

これに私が解釈を加えて、問題を起こすかもしれないと思ったのです。

単なる相関関係に、先入観や色眼鏡が加わって因果関係を見出してしまうのです。

人間関係の問題は、このようなことから拗れ始めるものです。


事実と意見

メンバーからの報告においては、 特に事実と意見を区別して事実を把握することが重要です。

部下の話から事実をつかむのはリーダーに必要な能力です。

しかし、これが難しい。 と言うのも人は自分に都合の良い解釈を入れて報告するので事実を事実としてとらえるのは難しいのです。 本当に注意深く話を聞かないと事実が掴めません。

例えば、A地点からB地点を経由して、C地点に到達するというタスクがある場合で、 A地点からB地点を飛ばしてC地点に着いたという報告の場合、厳密にいえばA地点からC地点に来て、そこでB地点を飛ばしたことに気が付いたというのが事実です。

重箱の隅を突くような話かもしれないですが、ビジネスにおいてはこのようなレベルで事実を事実としてつかむがことが必要ではないでしょうか。


リーダーの心の在り方

メンバーだけでなく、リーダーこそが自分の都合をいれて捉えてしまいがちです。

冒頭に触れたように、このコロナ禍の中で私は過度に楽観的に解釈したり、逆に過度に悲観的に状況をとらえて判断を間違うことがありました。

責任を背負うリーダーとして苦しい時は何かに縋り付きたくなり、事実を見る目が曇るのです。

状況が厳しければ厳しいほどその傾向は強くなります。

心が弱ると自分都合の解釈を事実に加えてとらえてしまうのです。

コロナ禍のように、先に全然見えないものほど自分の都合が反映してしまう。

正に黒が白く見えるようになっていくのです。

状況のど真ん中で視野が極端に狭くなっていき事実とは違う姿が見えるようになってしまう、恐ろしいことです。 事実を事実として把握するにはリーダーとしての心の強さが求められるのです。


まとめ

事実を事実としてとらえることは難しいことです。

一方、何が事実かをつかむことができれば、それほど間違った結論はでてこないものです。

事実をしっかりと把握できればビジネスにおける決定はほぼ常識レベルで対応できるのではないでしょうか。

大事なのは相手や自分の都合の解釈をそぎ落とし、事実を掴むことです。

そのポイントは、自分離れです。 自分の都合から、一旦離れてみることです。

責任を一身に背負って頑張るリーダーは、時に視野が狭くなり自分都合で解釈してしまうことがあります。

メンターやコーチとのセッションは、自分のとらえ方の偏りや認知の歪みに気づく良い方法です。

リーダーとして事実を事実としてとらえるために第三者の視点を利用することも有効です。

湯澤 剛
湯澤 剛
大学卒業後、1987年キリンビール社に入社。国内ビール営業、ニューヨーク留学、海外事業担当を経て、1999年飲食店チェーン経営者であった実父の急逝に伴い事業を承継。年商20億、負債40億の会社をボロボロになりながら16年かけて再生、負債も全額返済。現在は、飲食店経営と並行して中小企業経営者向けの講演を全国で行い、コーチングを活用した経営者向け個別相談も実施している。趣味・特技:空手初段

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