折れない心のつくり方:呼吸をコントロールする
逆境の時に、心が折れることなく平常心を維持するために、物事の受け止め方、解釈の仕方を変えていくことに取り組んできました。
状況や出来事に対する認知を変えることで、心が乱れないようにするのです。
一方、認知を変える取り組みはすぐに効果が出るわけではありません。
その点、手軽に取り組めて即効性もあるのが呼吸です。
自分でコントロールしやすい呼吸について意識することは、経営者の折れない心をつくる上でとても効果的な方法です。
呼吸と交感神経
交感神経と副交感神経からなる自律神経は、通常は自分ではコントロールできません。
呼吸は自律神経によって支配されている一方、自分でコントロールすることも可能です。
息を吸う時には主に交感神経が活動し、息を吐く時には副交感神経の支配下になり交感神経は抑制されます。
活動的な時に優位になるのは交感神経ですが、副交感神経が優位になるとリラックスして気持ちが落ち着きます。
深くゆっくりしたリズムのある呼吸で吐く息を長くすると副交感神経優位になり心が安定します。
逆に不安な時や、その極端な状態であるパニックにおいては、極めて浅い呼吸で吐く息が短くなっています。
呼吸に注目することで、自分や他人がリラックスしているのか、不安・緊張を感じているのか精神状態がわかります。
呼吸の在り方を通して、心を身体をつなぐ自律神経を変え、心の状態を変えることができるのです。
また、息が合うという言葉の通り、相手と呼吸のリズムを合わせることでラポールを形成することも可能です。
呼吸とセロトニン
セロトニンの研究で有名な有田秀穂教授は、座禅におけるリズム性のある深い呼吸がセロトニンを活性化させると主張しています。
セロトニンの効果を調べる実験では、セロトニン神経系に手を加えたネズミは、セロトニンの活動が弱まると攻撃性を高め、セロトニン神経系を移植し直すとまた攻撃性がなくなっていくそうです。
つまりセロトニンの活性が弱まることで攻撃性が高まるということです。
攻撃的になる=キレるという行動と、セロトニンの関係がネズミを使った実験で示唆されたのです。
セロトニンは深い呼吸により活性化されるので、呼吸の深さがストレスを受け止める器の大きさに関係しているといえるのです。
セロトニンの活動が低下すると攻撃的になり、また抑うつ傾向が強まります。
うつによる自殺者は、セロトニンが少ないという調査結果があります。
また、睡眠物質のメラトニンはセロトニンが分解されて生成されるので、ウツにより寝不足になるのはメラトニンが不足するからであり、それはセロトニンの活動が低下するからです。
セロトニンの活性を通じて、呼吸は心の安定に大きな影響を与えているのです。
まとめ
経営者にとって、逆境やトラブルが発生した時に心を乱すことなく、平常心を保つことはとても重要です。
しかし自分の心の状態をコントロールすることは簡単ではありません。
呼吸は自分自身で管理しやすい方法です。
深くリズミカルな呼吸を行うことにより、自律神経の働きを変えて心を落ち着かせるとともに、セロトニンを活性化させてストレスに対する耐性を高めることができるのです。
日々、様々なストレスに晒されることの多い経営者やリーダーにとって、呼吸法を身に着けることは折れない心をつくるためにとても効果的な方法です。