テレワーク時代のコミュニケーション
昨年最後のブログでは、山田さんが「テレワーク時代のリーダーとしての考え方」として、テレワークがうまく機能するために、リーダーが注目すべき3つの考え方を示していました。
たまたま、お手伝いしているIT系NPOの新ワークスタイル分科会で議論したことがありますので、山田さんとは異なる視点で話題をお届けします。
テレワークの影響
テレワークは、様々に、そして圧倒的なメリットを享受できるワークスタイルのひとつと言えるでしょう。私の前職では、20年程前から全従業員にどこからでもテレワークできる環境が提供されていました。私は上司に折衝して、最後の4年間は週一で在宅勤務し、テレワークの恩恵と限界を実感しています。
ただ、リアルな勤務の補助的スタイルとしてテレワークするのと、大半の時間をテレワークするのとでは、その影響は異なってくると言えるでしょう。
同じオフィスで、肉声の届く距離で働いていたときとテレワークとでは、やはり環境とツールとが異なるのですから、その違いを認識した上で、考え方、行動のあり方を見直す必要はあります。
そのひとつがテレワークによる疲弊。在宅銘柄の一社であるSlackでは、在宅勤務で「燃え尽き」を防ぐために、次のことを推奨しているとか。
個 人
- ちゃんと休憩をとる
- その日になにをするか計画を立てる
チーム
- 進捗確認だけの会議はやめる
- チーム構築を過小評価しない
組 織
- 働き方の柔軟性を保つ
システムによるリアルの補完
移動の負担がなくなり、効率的に働けるようになった分、却ってワーカーにはいろんな負担が増してきたとも言えそうです。
テレワーク・ツールのベンダーは、それまでの働き方とのギャップからくるストレスを解消するために、様々な機能拡張をアナウンスしています。
- オンライン会議参加者をディスプレ上に任意にレイアウト
- 瞑想機能
- バーチャル機能
ツールの工夫と改善は大切ですが、本質的ではないこと、セルフマネジメントで対処できる、すべきことのように感じるのは、私だけでしょうか。
言葉以外の情報を大切に
ストレスとは別に、リアルとテレワークの違いは、リアルな場を共にしていたときに五感で感じ取れていたことや、意図せず周囲の雑談・対話から得ていた情報が、圧倒的に限定されてしまうことは、皆さんも実感しているでしょう。
リアルな職場では、場の全体を感じ取り、多くの人を同時に観察できていたことも、テレワークでは難しい。
参加者の観察も、ディスプレに表示されるのは、大抵は胸から上ですから、服装や、姿勢、仕草などは捉えにくいものです。
また、ディスプレの向こうで喋っている上司・講師の視線は、頻繁に手元の資料やオペレーションしている画面に向かい、自分を撮っているカメラに向かっているとは限りませんな。感じていると思いますが、必ずしも互いの視線は合わず、表情の変化を見落とすことは珍しくもない。
音声をミュートして進行することも多いので、参加者は反応が希薄となり、運営側も反応を掴みきれないままに進行することは珍しくありません。このことに関して、最近では"Camera to Distance"というキーワードで、その負の影響を研究している論文も出て来たようです。
「会う・訪れる」はプレミアムな価値
ヒトとの対話は、言葉を中心に交わされますね。しかし、ヒトが外界から五感という知覚から得る全情報の80パーセントは、視界から得ていることはよく知られています。
そして、ヒトとのリアルなコミュニケーションでは、対話に伴う表情とボディランケージに加えて、知覚の割合としては低いものの、リアルな環境を共にして、触覚、嗅覚、聴覚からインパクトのある情報を得ています。
テレワークには圧倒的なメリットがあり、効率的な働き方を補助してくれるけれど、一方で、ヒトのコミュニケーションに重要な情報が、かなり限定される訳で、これは緩やかに影響してくることは想像できます。
実は、在宅銘柄で最も勢いのあるZoomも、テレワークで総てが解決すると考えている訳ではなく、寧ろ、「『会う・訪れる』をプレミアムな価値として再定義」と謳っています。
テレワークだからこそ、その可能性を信じ享受すると共に、言葉以外の情報が限られていることを意識し、リーダーとして質の高いコミュニケーションのために工夫できることや、新たに獲得すべきリテラシー、スキルがあるのかも知れません。
それがなんなのか、一緒に探ってみませんか?