振り返ってみて、今だから言える「上司の心得」(最終回)
会社員現役の最中では見えなかったものが、時間が経った今だから見えてくる。
思い返して改めて気付くこと、そしてそれが今の自分に繋がっているように感じることもある。
大変お世話になった前職の諸先輩の人となりと仕事ぶりを、論語の成句と共に振り返ります。
(氏名は仮名)
冷静沈着、淡々と仕事をこなす「望月先輩」
背筋をスッとの伸ばし、椅子に座りながらも体は微動だにせず、ただただ電卓をカチカチと打つ。
そして、すっと立ち上がってつかつかと上司のもとへ相談。
「了解。これで進めてくれ!」
こんな光景が目に焼き付いている。
望月さんって、外資系企業の経理マンの代表だな!
入社してまだ年の浅い砂村には、5年先輩の望月氏は雲の上の人。
会社全体のこと、ビジネスのこと、そしてもちろん経理に関すること。
全てを熟知しているスマートな先輩に、砂村は畏敬の念を抱く。
「こんなことも知らないのかい?」
質問をしようものなら、無言ながらこんな表情を返しそう。
しかし、上司からの指示に背くことはなく、淡々と期待に応えるので信頼は相当厚い。
人付き合いもそつなくこなすので、様々なプロジェクトを一手に引き受けながらも冷静に業務をこなし、粛々と結果を残していった。
「凄い人だな! でもちょっと近寄りがたいな。」
これが砂村の印象だった。
品質・スピード・論理性、全ての観点で完璧な必殺仕事人「山上先輩」
「はい、その予測値は最新の市場動向調査のデータに基づいています。もちろんうちの会社の状況も加味して若干調整してあります。恐らく90%強の確率で予測値に到達するはずです。もしご不明な点がございましたら、お席に伺ってご説明させて頂きます。」
隣の席で電話越しに説明する山上氏。話の内容から察するに電話の向こうは事業部長、もしくは役員クラスかも知れない。説明が立て板に水で論理的。
そして仕事はめっぽう速く、彼の辞書には間違いとかエラーという言葉は無い。
仕事をこなすという観点の全てにおいて完璧なのだ。
砂村より3年先輩で20歳代半ばにもかかわらず、将来の役員候補と目されているほどの秀才、そして根っからの仕事好き。
「砂村、さっき頼んだ仕事はどうなっている? おう、結構仕事速いじゃん。どれどれ? おいおい、やり直しだよ、お前。間違いだらけだぞ!」
隣の席から沢山のご指導を頂いた砂村だが、
「山上さんには普通のことでも、自分のような凡人には….」
頑張れば頑張るほど、山上氏との距離が遠くなってしまうように感じた。
視野が広くBig Pictureで周りを巻き込む理想家「中畠先輩」
「おーい、砂村、そろそろ飲みに行くぞ! いつものワインバー。あそこは品揃えが豊富で価格も手頃なんだ。お前もワイン、好きだろう?」
隣の職場の中畠氏は前述の山上氏とは同期入社だが、醸し出す空気は対照的。オープンな性格で根っからの酒好き。
入社後数年の駆け出しの砂村にとって、先輩社員からの話が色々聞ける良い機会。また当時、景気後退に伴い「残業規制」が我が経理部にも引かれていた。
残業代の一部を小遣いに充てていた砂村は、それが難しくなっていた。
会社と社員寮との空しい往復の毎日には、中畠氏との時間は大いなる刺激以上のものがあった。
彼は経理部員の一人ではあるが、あまり細かいことにはとらわれない豪放磊落な人。
しかし、事象を大きな視点で捉え全体を俯瞰的に見て、
「うちの会社の経理システムはこんな風になってくれると、我々も仕事がしやすくなるんだけどな! それで、経理データを使ってお客様、ここで言うお客様は社内の事業部側の人たちだけど、そういう人たちに役立つ情報が提供できる。ここに我々経理部の存在意義があるんだ。砂村、お前はどう思う?」
二人でワインを2本空けて、3本目くらいになると必ず始まる「中畠ビジョン」である。
当時の砂村には話の半分も理解できなかったが、中畠氏に何か魅かれるものを感じた。
顔を真っ赤にして将来のありたい姿を楽しそうに語る先輩。
「砂村、仕事していて、ここをこう変更したらもっと仕事が楽になるとか、何かアイディアがあったらどんどん教えてくれ!」
論語からの引用
論語に、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」という成句がある。「知・好・楽」と短く表現することもある。
仕事を知識として「知って」いる人は、仕事を「好き」だと思っている人には及ばない。
そして仕事が好きな人は、仕事を「楽しむ」人には及ばない。
自分のスタイル
このような素晴らしい方々と出会ってから30年以上が経つ。
先輩たちは夫々の卓越した能力を発揮して、その後も継続して大きな成果を残している。
私は先輩たちの人となりや仕事ぶりから、私自身の仕事に取り組むスタイルを学んだように感じる。
人にはそれぞれ仕事のスタイルというものがあり、どのスタイルが良いとか悪いとかではない。
自分自身はどのスタイルに魅力を感じるのか、という視点である。 一緒に働く人たちから受ける影響は大きい。
あなたの周りの人たちは、どういうスタイルで仕事をしているだろうか?
特に影響力の大きい職場のリーダーはぜひ、仕事の楽しみを伝える存在であって欲しい。
「知識よりも好きになること。そして更に楽しむこと。」
この発想が部下たちのやる気や成長を促すように感じる。
「仕事に楽しみを見出す」とか、「自分が楽しめるように仕事をアレンジする」など、仕事を「楽」しむスタイルを、ぜひ追い求めたい。
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