リーダーにとっての「沈黙は金」とは
リーダーにとってメンバーとの対話は、相手の成長を促す上でとても大切な時間。ところが、リーダーの中には「聴くのは苦手」という人は少なくないようです。
なかでも、部下が質問に答えられなくて黙ってしまうと、「つい、自分の方からあれこれと話してしまう」という声も多く聞こえてきます。
そんなあなたと一緒に、沈黙の価値について考えてみたいと思います。
どうしても待てない
コーチングをしていると、「たくさん話すことができた」という感想をいただくことがあります。
どういうところが話しやすかったかを尋ねてみると、「自分が話すまで待ってくれている」、「最後まで話し終えるまで、ずっと聞いていてくれる」などの答えが返ってきます。
そして、その方がリーダーの場合、「自分はうまくできないのですよ」、「待てないです」と続けられる方もいます。
相手に質問をすることはうまくできる方が多いようですが、「待つ」ことは苦手のようですね。
待てない理由は何でしょう? 待てなくてどうするのですか? と尋ねてみると、
- 「部下が黙っていると、質問が悪かったのかなと思うので質問を変える。」
- 「いたたまれない感じがして、何か話さなければと思う。」
- 「答えられないのは可哀そうかなと思って、自分で答えを探して話してしまう。」
などの答えが返ってきました。
したがって、上司として助け船のつもりで話しているということのようですね。
部下思いの方ほど、このような傾向にあるのかもしれません。
部下にとって大切な成長の時間
ところで、部下が質問に答えられない時間というのは、どういう時間なのでしょうか。
この時、部下の頭の中はまさに答えを探してフル回転している状態です。
成長のためには、「自分で考えて気づく、答えに到達する(そして行動する)」という体験が欠かせません。
自分の考えをまとめるのにどのくらいの時間が必要? 5秒、10秒では足らないはずですが、会話途中の沈黙時間は、とても長く感じますね。
私は研修中この話をするとき、何も言わないで15秒ほど沈黙してみることがありますが、本当に長く感じます。
だから待てない。でも部下はまさに今、格闘している時間。そこにギャップがあるのです。
上司が、「じゃ、僕が言おうか」と割り込むのは、優しいように見えますが、実は部下の成長のチャンスの芽を摘み取ってしまっている可能性があります。
「黙っていれば、上司が答えを出してくれる」ということが続くと、部下には、「また上司が教えてくれるだろう」という意識が生まれます。
考えること自体に真剣さが薄れ、大切な思考の訓練が行われなくなります。
その結果、部下の依存心はますます高まってしまうという、マイナスの連鎖が続いてしまいます。
「最近の若い人は自分で考えて動こうとしないんだから、困ったものだ」と言いながら、そのような部下を上司自ら作ってしまっている可能性があるのです。
「沈黙は金」という言葉は、「あれこれと弁解するよりも、時に、黙っていた方が得策である」という意味合いで使われたりしますが、リーダーにとっての「沈黙は金」は少々違います。
対話中に部下が考えている間は、「リーダーはじっと沈黙して待つ」ことが大変貴重な時間だ、という意味なのです。
リーダーの「沈黙は金」、ぜひ実践してみられることをおすすめいたします。
さいごに
ご存知の方も多いと思いますが、「沈黙は金」の「金」は「かね」ではなく、「きん」と読みます。
もとは、「雄弁は銀、沈黙は金」(沈黙は金、を先に言うこともあり)という、金と銀との組み合わせで、話すことと沈黙することを対比した表現です。
イギリスの思想家カーライルの著書の中にある、「Speech is silver, silence is golden」という一節が由来だそうです。
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