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心に留めたい一言(第三弾):「次」ではなく、「次の次」が大切なんだ!

様々な方とのメンタリング・セッションを通じて、私は多くのことを日々気付かせて頂いています。

このシリーズでは、その中でお聞きした「心に留めたい一言」をご紹介します。

なおセッション内容には「守秘義務」がありますので、主旨が伝わる範囲で編集しています。


副業・起業へのご支援依頼

副業、そして将来は独立起業を検討している。そのための事業計画及び実行プランを策定したい。

そんなお問合せを頂いてメンタリング・セッションを開始したMさん。一部上場企業勤務のサラリーマン。

技術系大学出身でエンジニアとして入社するも、能力を買われて現在は全社統括の経営企画部門に属している。

「何がきっかけで副業、そして起業をお考えなのですか?」

こんな問い掛けで始まったMさんとのセッション。

既に3回のセッションを終了したが、これまで扱ったテーマはいつも、計画づくりに関するもの。

「Mさん、前回までの3回のセッションで、副業・起業をどう準備するか、についてお話を伺ってきました。色々なアイディアも出ましたし、必要な資格やスキルの棚卸も大分出来たように感じますが、いかがでしょうか?」

4回目のセッションの冒頭で私はこう切り出した。

これまでのセッションの振り返りを促しつつ、当初のゴール到達への道筋と現在地を自分なりに確認して欲しかったからだ。

「そうですね、大分計画が見えてきました。これまで会社で培ってきた知見を活かしつつ、新たな経験やスキルを身に付ければ、副業そして起業の計画がより具体化するように思います。」

( メンターの視点 )

エンジニアとしての経験とスキルに加えて、市場動向や会社全体を見渡す能力を買われて異動になったMさんは、経営企画部でも成果を出している様子だった。

ビジネスモデルや事業戦略の構築手法にも知識が広いようで、計画づくりは私の眼からは完璧に見えた。

しかし、作り上げる計画の精度にあまりに拘るMさんのマインドに、少し違和感を持ち始めていた。


「計画づくり」は順調だが…

「それでMさん、今日4回目のセッションでは、どんなテーマでお話を進めて行きましょうか?」

「そうですね、実は前回までに作成した副業・起業計画を昨晩見ていて、そう言えば、提供サービスの絞り込みが不十分なのでは?と気が付いたんです。なので、今日はこの点を深掘りして行きたいと思います。」

「はい、提供サービスの絞り込みですね。私の印象では、これまでのセッションで対象顧客ごとに提供サービスを検討して、かなり絞り込んだ印象でしたが、いかがでしょうか?」

少しひるんだ表情を見せたMさんだが、

「えー、まあ、そうなんでが、でもここがとても気になっているんです。私は今、経営企画の仕事をしていますが、経験上この部分がビジネスの成功のカギを握っていると強く感じています。」

( メンターの視点 )

Mさんは本当は何がしたいのだろうか?何を成し遂げたいのだろうか? 副業・起業をしたいのか、それとも「計画づくり」がしたいのだろうか?

これまで数回実施してきたセッションが、重要な局面に来ているように感じた私は、Mさんにこう問いかけた。


本当にやりたいことは?

「なるほど。少し話がそれてしまうのですが、計画が完璧に仕上がったら、次は何に着手しますか?」

しばらく口を閉ざしたMさんからは、こんな返答が返って来た。

「もちろん、副業・起業を始めることになっているのですが…」

これまで何度となくかけた問いだが、今ここで再度問いかけることにした。

「副業・起業をしているご自身の姿を想像してみてください。例えば今日、月曜日の朝一番にMさんは何をしていますか?」

体を少し震わせたMさんは、しばし天を仰いでこう答えた。

「うーむ、計画づくりばかりに目が行っていました。前回までのセッションでもメンターから何度か、計画を実行している自分の姿のイメージ化するように働きかけがありました。しかし、行動に移すのがちょっと怖い、上手く行かないかも、と目を背けていたかも知れません。」

( メンターの視点 )

起業家にも色々なタイプがいる。何となくの感覚に基づいて計画無しで進めてしまう人。

一方、知識や情報を豊富に持っているがために「頭でっかち」になり、必要以上に慎重になってしまう人。

起業において計画づくりは重要ではあるものの、事業展開は計画通りには進捗しない。

私の経験からも予定通りには絶対進まない、と言って差し支えないだろう。


大事な視点

「そうですか。計画づくりは非常に重要ですが、完璧な計画は作れない。計画づくりの向こう側を考えてみませんか?」

「はい。どうも目先の『次』のことばかりに焦点を当てていました。実はこれが私の悪い癖なんです。もっと先のことや到達点から逆算する、という発想が無かった。メンターから何度となく、その点を問われた記憶がありますが、ぴんと来なかったですね。」

「そうですか、ご自身にそういう思考の癖があることに気付かれたのですね! では、どうすればその癖を回避できそうですか?」

これまで余り考えたことが無かった領域なのだろう。

表情は険しく、少し押し黙っていたが、暫くすると表情も和らいでこんな答えが返ってきた。

「次ではなく、『次の次』を見る、意識的に焦点を当てるようにすれば良いのかも知れません!」


まとめ:今回のセッションで得られた気付き

  • 誰しも「思考の癖」を持っている。それは思考の軸とも言えるので、それ自体が悪いものではない。
  • しかし、自分の思考の癖の罠に嵌まってしまうと、そこから抜け出せずに考えがぐるぐると回ってしまうことがある。
  • また思考の癖は、自分のものだけにその存在に気が付かないことが多い。そのような場合、他人の思考の癖を観察し理解することで、自分の癖に気付くことがある。

どんな優秀なリーダーであっても万能ではありません。

Mさんとのセッションを通じて、改めて「自分を知る」ことの重要性を痛感しました。




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砂村 義雄
砂村 義雄
上智大学経済学部卒。外資系大手企業などで財務経理本部長などを歴任し独立。 経営者を対象としたエグゼクティブ・コーチング、及び企業向けにコーチングとコンサルティングを掛け合わせた「協業型コンサルティング」を提供。また「1on1ミーティング」導入支援や管理職研修を通じて、組織開発・企業風土改革のプロジェクトを展開中。名古屋商科大学大学院 経営学修士(MBA)取得

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