無口の部下にどう接したら良いのか?
管理職やリーダーになると様々なタイプの部下を抱えることになります。安心して見守れる部下もいれば、将来を心配してしまう部下を抱えることもあるでしょう。
特に、何も相談してこなかったり、意思表示をしてくれない部下とのコミュニケーションに悩むリーダーも少なくないようです。
無口で存在感の薄い部下、しかし…
ある日の研修の後に、大手商社にお勤めのNさん(部長職)から、「傾聴することは大切なことだと分かりますが、無口な部下にはどのように接したら良いのでしょうか?」とご質問をいただきました。
Nさんによれば、部下のAさんが仕事の中で話をしているところをほとんど見たことがなく、周囲の中での存在感がとても薄いとのこと。
私がNさんに、「今までの中で、Aさんが比較的によく話していた時はどんな時でしたか?」と質問をしてみると、Nさんは少しだけ考え、「そう言えば、飲み会の時に一度驚いたことがありました。彼はドラゴンズファンなのですが、野球の話題になった時、人が変わったように熱く話を始めましてね…。」と当時の様子を語ってくれました。
私は、「そうですか、そのことを生かすとすると?」とたずねると、Nさんは少し間をおいてから、「そうですね…、朝、仕事が始まる前に前日のドラゴンズ戦の話を彼にしてみようかな…。うん、ちょっとやってみますわ。」と小さな納得感を得たような表情を浮かべて帰って行かれました。
過去の中にヒントはある
それから、3年ほどが経った頃、会社を退職されたNさんとお会いする機会がありました。Aさんのその後について聞いてみると、「そうそう、朝に野球の話をするようになってから、彼、すごく変わりましてね、周囲や上からも認められるようになって、今では海外の拠点で頑張っていますよ!」と、目を丸くして話してくれました。
このように、「無口」だと見える人であっても、24時間365日、無口であるわけではなく、その人なりに「熱く」語る時もあるはずです。
同様に、「やる気がない」、「協力的ではない」、「反抗的」に見える部下であっても、その反対の(やる気があった、協力的だった)時はなかっただろうか。その時は、どうしてそうだったのか。そこにヒントが隠れている可能性があります。
その後のAさんは・・・
このブログを書くことをご了承いただくために、Nさんに久しぶりに連絡を入れてみたところ、その後のAさんについて次のように教えてくださいました。
「彼は、この春に5年のバンコック駐在を終えて帰国し、課長格に昇格すると同時に、結構難易度の高いグループリーダーという職位に就き活躍しています。中途入社としては、異例です。無口なそんな彼が、組織のリーダーとしてどのように動いているのか今度聞いてみたいと思います。」
上司が部下に関心を示し、さらには部下の関心に興味を示したことで、部下の意欲が変わり、行動が変わり、組織の次のリーダーが育っているという好事例ではないかと思います。