すぐに解決できない問題に耐え抜く力
コロナ禍になって、はや2年。
新たな問題に直面し、私たちはなかなか有効な解決策が見出せない状況下にいます。しかし、一事が万事、実は私たちは、何が正解なのかがわからない時代を生きている、と言えるのかもしれません。
そんな時、私たちは「心のありよう」を何処に置けば良いのでしょうか。
20代の私に当時の上司がかけてくれた言葉
このことに関連して、最初に私の20代の頃の話をしたいと思います。
当時の私は、メーカーの開発営業という、ある意味特殊な仕事をしていました。
得意先の要求に従い、新たなものを創り出すゆえ(創り出す行為そのものはデザイナーやエンジニアが担当していました)、何が正解なのかがわからない状況に常にストレスを抱えていたように思います。
私が入社して4年経過した頃、新しい上司が赴任して来ました。その上司とは妙に馬が合い、何かにつけて相談・報告をしていました。
ある日、いつものように私が直面する問題に険しい顔をしていると、こんなことを助言してくれたのです。
「大石、なかなか解決しない問題というのはな、半日~一日ぐらい、一度放置してみろ。意外とコトが上手く進むものだぞ。」
当時の私にとって、目の前のモヤモヤを解決しないことには何も手がつかない、ぐらいの気持ちだったのですが、実際に一日程経過してみると、(事態が収拾したわけではないのですが)冷静な判断力を取り戻し、その後の事態が好転したという体験があります。
「ネガティブ・ケイパビリティ」とは何か?
私の体験談をご紹介したのには理由があります。
実は最近、ある学びの場で「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を教えていただきました。
「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉をご存知ない方も多いと思いますが、『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』の著者である帚木蓬生氏によると、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」とあります。
「ネガティブ・ケイパビリティ」の要旨は、「どうにも答えの出ない、どうにも対処できない事態にも、自らの可能性を信じて持ちこたえていけば、落ち着くところに落ち着く(解決する)ものであり、それも能力のひとつである」と私は解釈しています。
まとめ
私自身がそうなのですが、通常、人は「未完了感」を嫌い、目の前の問題をいち早く解決したいものだと思います。
しかし一方で、解決を急ぐあまりに、安易な答えや本質的ではない解決策に飛びついてしまうことも事実だと思います。
「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、現代のような、何が正解なのかがわからない時代だからこそ、私たちに求められる能力だと言えるのではないでしょうか。
先の上司の話に戻りますが、当時、その上司は「ネガティブ・ケイパビリティ」のことなど決して知らず(笑)、あくまでご自身の経験則に基づいた言葉だったと思います。25年程前の話ですが、現代にも生きる言葉をかけてくれたその上司には、ただただ感謝しかありません。