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「理念やビジョン」も重要だけど….「実行力」はもっと重要!

リーダーである皆様にとって、経営理念やビジョンの重要性には異論は無いと思います。

しかし、それらが単なるお題目や掛け声に留まってしまっては残念です。

そこで今回は、私自身の苦い経験を振り返りながら「実行力」について綴っていきます。


「絵に描いた餅」にしないためには?

ビジョンやミッションなど「経営理念」に類する語彙は数多くあります。

昨今は「パーパス」という言葉まで登場して百花繚乱の状況。

しかしその語彙の違いや使い方よりも、その意味することを実行に移していくことが重要で、それが取りも直さず経営だと言えると思います。

一方、「経営理念を明確に打ち立てれば、従業員が自発的に動き出す」という訳にはなかなか行かないのが現実です。

従って会社全体の理念やビジョンを自部署のレベルで咀嚼し、実行に移すという姿勢が必須です。

また、理念は全社を包括している表現のため、得てして曖昧にならざるを得ません。

そこでその理念を日々の日常業務の中で、どのように体現するのかという基準や目標に落とし込むと分かりやすいと感じます。


私が試してみたこと

「財務経理本部長への昇進、おめでとう」という祝辞の舌の根も乾く前に、アジア太平洋統括である上司から、私に提示された部署としてのゴールは「業務の高付加価値化」でした。

私が属していた米国系企業の日本法人は、売上規模も利益率もアジア諸国内では従来トップクラスでしたが、納入先顧客からの値下げ圧力も強くなり、年々地位を下げてきていました。

おまけに「日本は人件費が高い」という上司からの指摘に対しても反論が難しく、何とか現有人員を維持しつつ、部員のスキルアップと意識変革が急務な状況でした。

いきなり本部長に引き上げられた状況ということもあり、部下との経験やスキル、そして意識レベルにおいても残念ながらギャップがあると感じていました。

そこで上位方針をそのまま伝えるのではなく、部員が理解しやすく、かつ、「自分事」と捉えてもらえるような方法を模索し、次の施策を講じることにしました。

  1. 自部署独自の「スローガン」を考案し、提示する
  2. 部員一人一人に自らの「ありたい姿」を描かせる
  3. ありたい姿の実現のための「トレーニング計画」を部員自ら立案させる


振り返り:上手く行ったこと

  • 上位方針を自分事と考えてもらう効果と、キャリア構築の視点を持って欲しいという期待を込めて、私は「Be Professional!(プロフェッショナルになろう!)」というスローガンを掲げました。部員一人一人の経験とスキルを向上させることで、業務の高付加価値化の素地を作ろうという発想でした。
  • 一方、ここで言う「プロフェッショナル」という表現は、部署全体としては敢えて定義付けせず、部員個々人が想いを巡らし、私と一緒に考えて、一人一人決定することにしました。部員一人一人のスキルと経験のばらつきが大きいので、統一的な定義ではむしろゴール設定が曖昧になってしまう。また個々人の目標値を自ら定義することに意味がある、と考えたのです。
  • 個人で立てた「プロフェッショナル像」を実現するための道筋であるトレーニング計画を、部下と私とで一緒に作成しました。まずは個々人が必要と感じるスキルと経験をリストアップしてもらい、トレーニング計画のたたき台を作成する。そしてそれに基づいて上司である私と協業して計画を完成させる。

自らが目指すプロフェッショナル像を、自分で考えて描くことは相当大変な作業だったと想像されます。

しかしその苦労には色々な観点で大きな意義があったと感じています。

抽象的なものを具体化する・イメージ化する訓練、そしてキャリア構築を「自分事」にしてもらう効果もあったはずだと考えています。


振り返り:上手く行かなかったこと、そして今なら出来る工夫や仕掛け

一方、反省すべき点、そして工夫の余地は大いにあります。

  • 先ず自部署のスローガンを私が一人で検討し決定したため、理解と浸透には時間を要しました。リーダー格のメンバーにスローガン創りの初期段階から関わってもらっていれば、結果的には早道だったと思います。またリーダー格のメンバーを巻き込んでおくことで、私の意図もきちんと伝わり、その後の進捗管理もより効率的に進められたかも知れないと感じています。
  • 進捗管理も常に私との「1on1」で確認するのではなく、仕組みを構築することも出来たと思います。例えば、二人一組のペアになり、お互いに状況を共有しながら取り組む「バディシステム」を活用すれば、より効果的、かつスムーズだったと想像されます。

全体を振り返って今思うことは、私一人が部員全体を引っ張る構図となってしまい、所期に期待していた通りには浸透はしなかったです。

そして、自ら進んで取り組む部員とそうでない部員とで意識に開きが出てしまったようにも思います。

また、個々人をより強く動機づける何らかの「インセンティブ」を用意した方が効果的だったようにも感じます。

昇給や臨時ボーナスなど経済的インセンティブは導入が難しく、かつ効果が時間と共に目減りするため、何か別のものを考案したかったです。

この点においても、リーダー格のメンバーと検討することでより実務的なアイディアが出てきた可能性はあります。


まとめ・教訓

ここまで私の体験談をお伝えしてきました。

「言うが易いし、行うが難し」で、実行力というものは一朝一夕には身に付かないと改めて感じます。

しかし今こうして振り返ってみると、いくつか重要なポイントがあるように思います。

  • 上司やリーダーだけで進めず、キーメンバーの部下も巻き込む
  • メンバーのへの動機づけと「自分事」化が重要(個人の想いと、会社の方向性との整合を取る)
  • モチベーションを維持する仕組み
  • 仕掛けを検討する

理念や計画を策定することと同様、いやそれ以上に困難が伴う実行段階。

皆さんはどのような理念や計画を実行したいですか? 

その想いを経験豊かなメンターと共有しながら、どのように実行していくかを、一緒に考えてみるのも良いですね。

砂村 義雄
砂村 義雄
上智大学経済学部卒。外資系大手企業などで財務経理本部長などを歴任し独立。 経営者を対象としたエグゼクティブ・コーチング、及び企業向けにコーチングとコンサルティングを掛け合わせた「協業型コンサルティング」を提供。また「1on1ミーティング」導入支援や管理職研修を通じて、組織開発・企業風土改革のプロジェクトを展開中。名古屋商科大学大学院 経営学修士(MBA)取得

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