1on1に役立つ基礎理論 〜 効果的な動機づけ
企業の中で導入が広がる1on1ミーティング。ですが、「うまくいっているとは言えない」という声も多いようです。
1on1本来の効果を得るためには、「知識」と「実践」の両面から取り組む必要があります。
今回は、1on1などにおいて部下の動機づけに役立つ、いくつかの概念をご紹介します。
部下の欲求はどこに?
心理学者のマズローは、人の欲求は、段階を経て、より上位の欲求を欲するようになると考えました。
この段階は5つの階層となっており、下から
- 食欲や睡眠などの生命維持に直結した、生理的欲求
- 危険や脅威、不安から逃れようとする、安全欲求
- 集団への帰属や、愛情を求める、愛情・所属欲求
- 尊敬されたい、注目を得たいという、自律・尊厳欲求
- 自分の価値観に基づいた目標に向かう、自己実現欲求
で構成されています。
ある段階の欲求が充足されると、その欲求は、もはやモチベーションを強めることには役立たず、それよりも上位の欲求に意識が向くようになると、マズローは考えました。
部下に接するにあたり、部下の現在の欲求がどの段階にあるかを知ることで、効果的に部下のモチベーションを高めることに活用できる可能性があります。
また、必ずしも、現在のあなたのモチベーションに繋がる要素が、部下のモチベーションの向上には役立たない可能性があることを、知る助けになるかもしれません。
"アメ"と"ムチ"はもう古い?
アメリカの作家、ダニエル・ピンクは、新しい動機づけの概念として、「モチベーション3.0」を提唱しました。「モチベーション3.0」とは、人のモチベーションについて、コンピューターの基本ソフト(OS)、に例えて表現されたものです。
従来の外発的な動機づけ(モチベーション2.0)は、ルーチンワーク中心の時代には有効だったが、21世紀を迎えてからは機能不全となっていると唱えています。
現代社会において、生産性を高めたり、成果を生み出すためには、チームメンバーの高い意欲を引き出すことが大事で、それを引き出し持続させるには、内発的な動機づけ(モチベーション3.0)が有効だと述べています。
「モチベーション3.0」の特徴は、自律性:取り組み方は自分で決定したいという欲求、熟達:自分の能力をどんどんと上達させたいという衝動、目的:「目的を持って人生を送りたい」という人間に深く根ざした欲求、を満たすように関わることを推奨しています。
効果的な動機づけ6つの要素
ここまで説明した、動機づけに関する基礎理論をまとめてみましょう。
複数の動機づけの基礎理論から、効果的な動機づけの要素として、6つのキーワードが浮かび上がります。
他者との関係では、安全、承認、貢献が、内発的な要素としては、自律、成長、達成があげられます。
これらの要素を1on1や日常業務の中で用いることで、部下のモチベーションの向上に役立てられる可能性があります。
1on1に役立てるための6つの問い
これらを1on1役立てるために、下記の設問について考えてみてください。
【Q1】あなたの関心事・欲求は、マズローの欲求段階説のどの階層にありますか?
【Q2】部下の関心事・欲求は、マズローの欲求段階説のどの階層にありますか?
【Q3】部下の関心事・欲求を満たすために、あなたがすぐにできることは何ですか?
また、1on1の中では、次のような質問を部下に投げかけてみましょう。
【Q4】●●さんは、どのような方法でやるとうまくいくと思いますか?
【Q5】この取組みを通じて、どんな自分に成長したいと思いますか?
【Q5】どのような点で、チームメンバーに貢献できると良いですか?
お役に立てば幸いです。