中途採用者のオンボーディング事例
先日、10年前まで所属していた部署に出向き研修を担当させて頂きました。
そこでは、遡ること15年前後に中途入社してくれたメンバー達と再会でき、清々と活躍されている姿に触れ大変うれしく思いました。
新卒の穴を中途が埋めてくれた
2000年からの米国のIT不況に端を発し、その後数年に渡り新卒の社員を採用しない時期が続きました。
その結果、この部署でも中核の30代の営業担当社員がゼロといういびつな人員構成になっていたのです。
やっと数年後、この危機的な人材不足を中途社員募集と言う形で穴埋めしたのでした。
当時、私は自部門に配属された4名の中途社員は基より、他部門に配属されたメンバーも含め、この10数名を「絶対に辞めさせるわけにはいかない」と心に誓っていました。
何しろ数年ぶりの待望の新入社員です。 ぽっかり空いた大きな人材の穴が漸く埋まりそうです。その彼らを早々に離職させてしまっては事業の存続も危ぶまれます。
結果を申し上げますと、入社して直ぐに一人は辞めていますけど、10年以上経過した現在でも皆さん在籍しています。いずれ全員が支社の経営層へと成長されることでしょう。
組織になじむ力があった
尾形真実哉氏の著書「組織になじませる力」によると、オンボーディングとは、 会社による「組織になじませる力」と、個人が「組織になじむ力」の双方が必要だそうです。
この「組織になじませる力」は、当時の私は持ち合わせていなかったと思います。
オンボーディング(順応促進)やリテンション(人材確保)などの対応策はおろか、 言葉さえも知りませんでした。
せいぜい行っていたことは、頻繁に飲みに誘ったことと、社内でソフトボール部を作る支援をしたことぐらいでした。
一方彼らは、中途採用者たちでひとつの同期グループを形成し、自らまとまりながら組織に繋がっていました。
この「組織になじむ力」が彼らにはそもそも備わっていたのですね。そこは大きな幸運でした。
経験学習で学んでくれた
それから彼らには入社後、慣れる間もなくお客様を担当してもらっています。
そもそも人材不足を補う即戦力として採用されていますから仕方の無いことでした。
十分にOJTを受けることなくお客様を担当することになり、あるメンバーなどはお客様に問い質された際に返答に窮し、「説明はできませんが、私を信じてください!」と言って、書類にサインをもらってきてくれたこともありました。
彼らは日々の実戦の中から、経験学習能力を使って成長してくれたのですね。
人はその学びの7割が経験からと言われます。あとの2割は上司など人から、1割が自らの自己啓発です。
直ちに一人前として扱われた環境と行動が、結果的に彼らの早期の成長へとつながったのでしょう。
まとめ
すばらしい人材に恵まれたのは幸運でした。 しかし、直属の上司としてできることがありました。 組織になじむ力を発揮してもらう工夫はもっとできたでしょう。
日々の経験から、もっと多くの気づきを引出すこともお手伝いできたはずです。
遊びやイベントだけでなく、本音と事実が遠慮なく語れる機会を用意することもできます。
もっともっと彼らの考えや思いを聴いてあげれば良かったと思います。
リーダーの役割は、メンバーの目標達成に伴走することです。 その中で中途採用者のオンボーディングが成されリテンションが実現していくと思います。