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自他を尊重した爽やかな自己主張を実践する

ビジネスにおいては様々な局面で多くの利害関係者とコミュニケーションを取る必要があります。

例えば社員への指示や面談、取引先との交渉、金融機関との関係つくりなどです。

ビジネスにおける成功のカギはコミュニケーションによるところが多いと言っても良いのではないでしょうか?

そんなに重要なものにも関わらず、私たちはコミュニケーションについて正式に学ぶ機会は少ないのが現状です。

学校教育の場でもコミュニケーションについて特に体系的に教えられることもなく、自己流で身に着けていくことがほとんどです。

今回はコミュニケーションスキルの中で、特に日本人が苦手とするアサーションスキルについて考えてみます。

アサーションとは自分にも他者にも存在する自己表現の権利を尊重する、自他尊重のコミュニケーション、いわば爽やかな自己主張のことです。

具体的には自分の気持ち、欲求、意見などを正直、率直にその場に適切な方法で表現し、同時に相手にもそのように奨励することです。


非主張的なコミュニケーションスタイル

20数年前に突然、経営者としてスタートした私は次々に発生する問題に対処していく中で、極端な二つのコミュニケーションスタイルを取るようになっていきました。

一つ目は、極端な非主張的なスタイルです。

多額の負債を抱えていつ倒産してもおかしくない状態であったので、私は金融機関に対しては徹底的に従順に対応しました。

どんなに忙しい時や予定が入っている時でも銀行から呼び出されれば、銀行を優先して二つ返事で呼び出しに応じました。

いくら何でもそれはおかしいと思うような銀行からの要請も、作り笑いを浮かべながら唯々諾々と従っていました。

銀行だけなく一部の社員に対しても、同じように非主張的に対応せざるをえませんでした。

ここは厳しく言わなければならないという場面で毅然とした態度を取らずにうやむやに済ませてしまったことも多々ありました。

80人ほどいた社員はそのほとんどが流れ者の板前だったので、厳しく注意をして突然辞められると店が回らなくなるという恐れから言うべきこと、求めるべき当然のことも言わずにやりすごしました。

銀行や一部の社員に対して言いたいことも言わずに、自分の内部に溜め込んでいったので私の心の中は、情けなさと怒りで渦巻いていました。


攻撃的なコミュニケーションスタイル

自分が弱い立場の時には、極端に非主張的なスタイルで人に対する一方で、私はとても攻撃なコミュニケーションを取ることも多かったのです。

私が立場的に優位である相手、例えば仕入れ先の業者さんや従順で帰属意識の高い社員、または利害関係のない一般の方々に対しては攻撃的なコミュニケーションのスタイルを取っていました。

不機嫌な表情で相手を睨みながら声高に自分の主張を述べ、それが叶わないと大きな声をだして相手の話も聞かずにこちらの主張を強引に押し通すこともありました。

今から思えば本当に酷い態度を取っていました。

相手が強い場合は言うべきことも言わずに卑屈な作り笑いでごまかす、相手が弱い場合は、強面顔で声高に無理を押し通す。

こんな極端な二面性をもちながら過ごしているうちに当然ですが私は自己嫌悪に陥っていきました。


アサーティブなコミュニケーションとは

そんな時に、会社員時代に受講したアサーション研修を思い出し、その参考書を読み返しました。

自分も他者も尊重しながらも、言うべきことは冷静に、そして適切に主張する。

経営者として窮地に立っている自分に必要なのはアサーティブなコミュニケーションスタイルだと実感したのです。

そしてその型のひとつであるDESC法を習慣化するようにしていきました。

DESC法とは問題状況に対して自分がどうしたいか、相手に何をどこまで期待するかを表現できるように状況を整理するコミュニケーションの型です。

DはDescribe:問題状況、場面を事実に基づき具体的、客観的に描写する。

EはExpress:状況や相手の行動に対する自分の主観的な気持ちを表現する。

SはSpecify:相手に望む行動や妥協案、解決策などを具体的、且つ簡略に提案する。

CはConsider:肯定的な結果や否定的な結果を予想し、それぞれの場合における選択肢を考える。

以上のようなDESC法の型に沿ったコミュニケーションを使って、状況を客観的に描写し、自分の主観的な気持ちを表現して、相手に自分の望みを伝えるようにしていきました。

特に効果的だったのは、DとEを分けること、つまり事実と感情を分けて話すことでした。

「あなたは私を馬鹿にしている」と感情的に相手に伝えるよりも、「あなたは私に~と言った」、「私は馬鹿にされた気持ちになっている」と事実と感情を分けて伝えることで、自分も相手も少しは冷静に話せるようになっていきました。

そして自分が相手に自分の気持ちを伝える権利があるのと同じように、相手も相手の気持ちを表現する権利があると認めることで私のコミュニケーションは少しずつ改善していきました。

相手が何を主張しようとそれは相手の権利であると思えば、こちらも相手の言葉によって感情的にならずに済むのです。


まとめ

相手に慮って自分の言いたいことを言わない非主張的なスタイルでもなく、相手の気持ちを無視した攻撃的なスタイルでもない、いわば爽やかな自己主張であるアサーションを身に着けることで自他を共に尊重するより良いコミュニケーションが実現できます。

そして有難いことにアサーション、自己主張についても性格や生い立ちによって決定されるのではなくコーチングと同じように、学習し繰り返し実行するといった訓練により習得できるのです。

湯澤 剛
湯澤 剛
大学卒業後、1987年キリンビール社に入社。国内ビール営業、ニューヨーク留学、海外事業担当を経て、1999年飲食店チェーン経営者であった実父の急逝に伴い事業を承継。年商20億、負債40億の会社をボロボロになりながら16年かけて再生、負債も全額返済。現在は、飲食店経営と並行して中小企業経営者向けの講演を全国で行い、コーチングを活用した経営者向け個別相談も実施している。趣味・特技:空手初段

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