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導入ブームの「1on1ミーティング」を再考する(第一話):導入検討編

日本企業で導入を検討する企業が多くなっている「1on1ミーティング」。

元々は米国で実施されてきた上司部下の一対一の対話の場を、日本へ輸入してきたものです。

これを一種のブームで終わらせないように、私の導入支援のエピソードも交えながら、導入時の検討ポイントをお伝えします。


「どうして『1on1ミーティング』なのですか?」

前職で同僚だったMさんから突然電話がかかって来た。

転職先の上場企業子会社で工場長に就任したと風の便りでは聞いていた。

「砂村さん、『1on1ミーティング』ってご存知ですよね?」藪から棒に何か、と問えば、ぜひ導入したいから知恵を借りたいとのこと。

実はここ1~2年、同様の依頼が増えてきていますが、問合せを頂いたお客様には必ず、以下の問い掛けをするようにしています。


問1:御社の組織内で今、どのような課題を抱えているのですか?

問2:その解決策に「1on1ミーティング」を採用したいのは、どのような理由ですか?

問3:どのくらいの時間軸で、その課題を解決したいですか?


「そもそも論」で、いささか意地悪な問いかも知れないですが、重要な視点だと考えています。

なぜなら、自社の抱える課題と「1on1ミーティング」との関連性について、真剣に検討した上で導入して欲しいと思っているからです。


「なぜ『1on1ミーティング』なのか?」を自らに問う

書籍や各種セミナーなど色々なメディアなどで、既に導入の効果が謳われています。

しかし気を付けたいのは「1on1ミーティング」は飽くまで手段、という点です。

どうも日本人の悪い癖がここでも見え隠れするように感じます。

米国で効果が出ている手法を、そのままの形で輸入しても同じ効果を期待するのは難しい。

「仏作って魂入れず」ではないですが、型はともかく、その「魂」を理解した上で導入を検討したいです。

そのためにも先ずは、どのような組織課題を解決したいのかを明確にする必要があります。

そして「自社ならでは」の課題を抽出し、「どのようなスタイル」の1on1ミーティングを実施すれば、効果が出るのかの「仮説」を立てると良いと思います。

例えば、社員が毎朝元気に挨拶するようになる、年度末に人事考課の納得度が上がる、「突然辞表」が減少する、などがその具体例です。


導入時の検討ポイント

導入を検討する際に、ぜひ考えて欲しいポイントには、以下のようなものが挙げられます。


(1)期待したい効果に基づいて導入手法は柔軟にデザインする

達成したい「真のゴール」を明確にした上でなら、手法の「カスタマイズ」は問題ないと思います。

しかし考慮したい点は、仕事の進め方、意思決定方法、社内コミュニケーションのスタイル、理想の社員像など、「自社ならでは」の環境や特長を勘案した上で導入手法を決めることです。

例えば、現場作業が多い職場でまとまった時間の捻出が難しいのであれば、実施頻度と時間は、毎週15分でも良いし、2週間に一度30分でも良いです。

また条件を勘案すれば、必ずしも直属の上司部下でなくても良いかも知れません。

自社が狙う効果や、実行しやすさの観点から柔軟に設計することも必要だと考えます。


(2)進捗管理の仕組みとKPIの設定(定量的&定性的)

効果測定が簡単ではない「1on1ミーティング」ですが、何らかの方法で進捗状況を把握したいです。

例えば、実施スケジュールの予実管理を導入したり、定期的にアンケート調査を行うのも一法です。

特にアンケート調査では上司、並びに部下の感想や手応えといった定性的な情報を怠りなく収集したいところです。

ある会社では、定期的に実施している「社員エンゲージメント調査」に組み入れている、と聞いています。


(3)社内コミュニケーションにおける「基本行動様式」の一つである

「1on1ミーティング」それ自体は上司部下の対話の場です。

しかし、ここで実践されているコミュニケーションのスタイルは、実は社内の他の場面でも大いに活用できるものと考えられます。

と言うのも、これは昨今しばしば採り上げられる「心理的安全性」の場づくりに大きく貢献するからです。

組織横断的なプロジェクトや新製品開発など、イノベーションを生むためには絶対に欠かせないものと最近の研究では実証されています。

その場づくりを醸成する素地を「1on1ミーティング」は創っている、と理解すると導入の意義が深まると思います。


導入検討の「最初の一歩」とは?

実施頻度や所要時間、使用スキルの体得や報告の有無など、細かい点まで含めると様々な項目や準備が必要です。

しかし最初に着手して頂きたいのが、

「自社独自のネーミングを創り出す」

「1on1ミーティング」の文字通りの意味は「一対一会議」です。

何とも味気ない呼び名だとは思いませんか?

この呼び名が、年度末に社員一人一人に実施される「人事考課面談」との違いを分かりにくくしているように感じます。

自社が抱える課題を「自社ならでは」の手法で解決するための仕組みですので、自分たちならではの「ネーミング」を是非創り出して欲しいと強く思います。

なぜなら、自分たちの手作りならではの想いや「ありたい姿」を言語化し、組み入れることに必ずやなると確認するからです。


一例ではありますが、こんなネーミングはいかがでしょうか?(私のセンスは酷いので、ほんの一例です!)

  • ざっくばらん対話
  • 将来トークセッション
  • あなたが主役タイム


まとめ・教訓

つい「導入ありき」で考えがちな「1on1ミーティング」ではありますが、定着して効果が見えるようになるには想定以上の時間を要するのが実情です。

そこで「どのような課題を解決したいのか?」という原点に立ち返って、導入を検討することが肝要です。そして自社ならではの「カスタマイズ」されたスタイルで、じっくりと進捗・前進させていけば、必ずや効果は見えてくると信じています。

もしそれでも導入を迷っているようであれば、支援経験を有するメンターがじっくりとお話をお聴きして、方向性を見出すお手伝いをさせて頂きます!

砂村 義雄
砂村 義雄
上智大学経済学部卒。外資系大手企業などで財務経理本部長などを歴任し独立。 経営者を対象としたエグゼクティブ・コーチング、及び企業向けにコーチングとコンサルティングを掛け合わせた「協業型コンサルティング」を提供。また「1on1ミーティング」導入支援や管理職研修を通じて、組織開発・企業風土改革のプロジェクトを展開中。名古屋商科大学大学院 経営学修士(MBA)取得

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