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導入ブームの「1on1ミーティング」を再考する(第二弾):上司・管理職編

元々は米国企業の人事施策の一つである「1on1ミーティング」。

導入を検討する日本企業が着実に増えてきています。

これを一種のブームで終わらせないように、私の導入支援のエピソードも交えながら、導入時の工夫や心構えをお伝えします。

今回はその第二弾、上司・管理職の視点に立ってみます。


エピソード:「気が重いんです、『1on1ミーティング』って!」

「最近始められた1on1ミーティング、進捗はいかがですか?」

導入支援を行ったクライアント企業の課長職の一人にさりげなく訊いてみた。

さっと表情がくぐもって「いやー、ちょっと気が重いですね。」

私は出来るだけ表情を変えずに口を継いだ。

「そうですか、気が重いですか!」「そうなんです、部下に何かを話させないといけない、ということが。」

導入したばかりの企業の上司・管理職から様々な感想や気付きを頂きます。

その中で多くを占めるのが「どうすれば部下が話をしてくれるか」という点です。

人はどうすれば重い口を開いてくれるのでしょうか?


「思い込み」を取り除く

社内で「1on1ミーティング」を導入する際に感じる大きなチャレンジは、対話が取りも直さず「上司と部下」という関係上に成り立っていることです。

部下の業績向上やキャリア構築支援を目的にしているため、この関係性が土台となっているのは当然ですが、この状況が皮肉にも事を難しくしているディレンマがあるのです。

つまり、上司側が「自分は管理職として、部下の業績向上やキャリア支援をすることがその責務であり、何とかそれに貢献して成果を上げたい。そのためには自分が自ら部下を導いて……。」

こう考えてしまうのは至極当然です。

従って「1on1ミーティング」を実施する際に先ずは、一旦これを横へ置くことから始めることが大切です。

上司が話す・指示する・教える、という役割の「思い込み」を一度捨てて取り掛かりましょう。


上司・管理職の心構え

そこで初めて導入する際、上司・管理職に持って頂きたい「心構え」を3つお伝えします。


・目の前の「ひとりの人間」に対峙する

先ずは目の前にいる部下という「ひとりの人間」に興味を持って欲しいです。

よく考えてみれば、同じ職場で上司・部下の関係になったことは単なる偶然です。

出張中に機内でたまたま隣り合わせた、見知らぬビジネスパーソンとある意味で同じなので、「この人はどんな人なんだろう?」という健全な好奇心を持って臨みたいです。

職場における業務は我々の視点を「モノ」へ向かわせがちです。

「仕事の進捗」「業績向上」「課題は何か?」など、「誰が」ではなく、「何が」が重要になってしまっています。

しかし「1on1ミーティング」は会社内であっても一種の別世界。

ぜひ「ヒト」に焦点を当てることを心がけて欲しいです。


・上司・管理職は「答え」を持たなくて良い

上司や管理職は何らかの方針・指針、提案、解決策などの「答え」を常に持っていることが求められている、と感じていると思います。

しかし「1on1ミーティング」における対話では、上司・管理職は一切、答えは不要です。

分からないことや知らないことがあったら遠慮なく「いや、ごめん、その点は分からないです。○○さんはどう思うの?」と訊いてください。

この素朴な「知らないから教えて欲しい」という問い掛けと姿勢は、お互いの関係をフラットにするきっかけになると感じます。


・短期的・具体的な効果・成果は追い求めない

職場での活動に関して会社は何らかの「成果」を求めるものです。

ROI、いわゆる投資回収の意識は業務遂行上では重要な視点です。

しかしこの「1on1ミーティング」に関しては、短期的・具体的な効果を求めすぎると逆に上手く行かないように感じます。

最近は死語になりつつある「たばこ部屋」。煙草を吸う方はご経験があると思います。

短期的・具体的な効果は誰も期待していない(いやむしろ、煙草を吸わない人にとっては、一種のさぼりに見えますよね?!)

ですが、実は有形無形の成果が出ているとよく耳にします。


導入開始の「最初の一歩」

では、正に導入しようとされている管理職は、先ず何から始めたらよいでしょうか?

お勧めしたいのは次の2点です。


・非日常を演出

1on1ミーティングは一種「別世界」とお伝えしました。

しかし、それを業務上の定例会議を行っている、いつもの会議室で実施したらどう感じるでしょうか?

特別感もなく気分的には、普通の上司・部下の会議と何ら変わりませんね!

人間は物理的セッティングなどの外部環境に大きな影響を受けるものです。

そこで可能な限り、非日常的な環境で「1on1ミーティング」を実施して欲しいです。

もし可能ならオフィスの周りを散歩しながらでも良いです。

会社の食堂など通常は会議をしないような場所を選ぶのも一法です。

社有車で客先出張中の車内で、という設定もあり得る選択肢だと思います。


・部下としての経験を活かす

上司・管理職である皆さんは恐らく同時に、どなたかの部下であることが多いと想像します。

ということはつまり、部下であることの経験をたくさんお持ちだということ。

この価値ある経験をぜひ活用して欲しいです。

「自分が部下だったら、上司・管理職からどのように扱われたいか?」「こういう状況では、どのような言葉がけをしてもらえると有難いか?」

部下経験の長い上司であるあなたの中に、部下との対峙方法の答えがあると確信します。


【まとめ・教訓】

「1on1ミーティング」は米国企業の人事施策の一つ、と冒頭ご紹介しました。

しかし外資系企業に長く勤務した経験からすると、これは施策というより人間関係を構築するための「土台」のように感じます。

成果・結果を求めず、自分が「ヒト」としてどう扱われたら嬉しいか、有難いのか?という原点に返って実施してみると、色々なものが見えてくると感じます。

そして部下があなたを、上司としての前に「ひとりの人間」として見てくれるようになれば「1on1ミーティング」の所期の目的は達成されたものと思います。


次回の「第三弾」に続きます。

砂村 義雄
砂村 義雄
上智大学経済学部卒。外資系大手企業などで財務経理本部長などを歴任し独立。 経営者を対象としたエグゼクティブ・コーチング、及び企業向けにコーチングとコンサルティングを掛け合わせた「協業型コンサルティング」を提供。また「1on1ミーティング」導入支援や管理職研修を通じて、組織開発・企業風土改革のプロジェクトを展開中。名古屋商科大学大学院 経営学修士(MBA)取得

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