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経営のやり方とあり方

中小企業の経営者として23年間過ごしてきてつくづく思うことは「経営のやり方とあり方」ということです。

どれだけ会社が大きくなっても、利益が上がっても、経営のあり方が正しくなければ会社は良い方向に進まないと改めて実感しています。

一方、あり方だけを追い求めていても結局はお題目に過ぎず、結果を出すためには効果的なやり方をしっかりと進めていくことが大事とも思います。

あり方をしっかりと定めて、やり方を追求していくことが大切だと感じています。


利益を追い求める経営

経営者になってからは多額の負債を背負っていたこともあり、とにかく利益を上げねばならず、どうやったら売上があがり、必要な利益が確保できるかだけを考えて実行してきました。

金融機関からの借金の額と元利返済額を考えると、毎年1億5千万円以上の利益を確保する必要がありました。

そのため会社を倒産させないために、とにかく利益だと割り切ってきました。

お客様に喜んでいただく、社員を大切する、この考えは当然持っていましたが、それはあくまでも利益を上げるための手段だったのです。

確実に利益を上げるためには、社員のやる気を引きだし、お客様の支持を得ることが必要だったので、そこに注力してきたのです。

自社の強みを把握し、外部環境の機会を見出していく。

そして市場を細分化して自社にとって最も適したターゲット顧客を決めて、すべての活動をそこに向けて統合してしていく。

戦略的には理詰めに考えて、社員に対してはやる気を失わないように、一人一人とコミュニケーションを取っていきました。

徹底して結果を出すやり方を追求して取り組んでいくことで、売上、利益ともに上昇していきました。

潜在的な問題は常にありましたが、結果を出すことにより、それが顕在化することなく前に進んでいったのです。


緊急時に問われる経営者の姿勢

売上も利益も上がり少しずつ店舗の雰囲気も良くなっていったのですが、平成16年に大きな危機に見舞われます。

米国で狂牛病の牛が発見されて、米国産牛肉の輸入が禁止されることになってしまったのです。

その当時当社は牛丼フランチャイズ店を5店舗経営しており、売上、利益共に全社の30%が牛丼店部門から生まれていました。

米国産牛肉の輸入禁止により牛丼が提供できなくなり、この部門からの利益は激減してしまったのです。

焦った私は居酒屋部門への叱咤激励と数値管理を徹底していきます。

売上、原価、人件費という数字を追求して現場を追いつめていきました。

現場は酷く疲弊していきましたが、一方その結果、居酒屋部門では過去最高の利益をあげることができたのです。


徹底した利益追求の先にあったもの

牛丼店の不振がありながらも、居酒屋部門で過去最高益を確保したのは、平成18年12月のことでした。

しかし危機を乗り越えたと思ったその先には、とんでもない事態が待ち受けていたのです。

居酒屋部門が最高利益を計上した12月の翌月の平成19年1月に、ノロウイルスを原因とした大規模な食中毒事故を出してしまったのです。

30数年の会社の歴史で一度も出したことのなかった食中毒でした。

そしてようやく食中毒事故の対応が落ち着いたと思った平成19年3月には、今度は火災を起こし、ある店が全焼となってしまうのです。

この時私はほとほと弱り切ってしまいました。

なんでこんな不幸が立て続けに私に降りかかるのかと運命を呪いましたが、これらはすべて利益だけを徹底して追及してきた経営のやり方が原因でした。

人件費を削っているので人員が慢性的に不足し、ノロウイルスに感染して具合の悪くなった社員が休むに休めず、無理に現場に出てきて感染を広げてしまう。

人が足りないので火を使って調理をしながら並行して他の作業をやり、目を離して火事になってしまう。

すべて利益だけを追求したやり方の結果だったのです。


あり方の大切さ

平時で売上や利益が上がっている時には見えない経営のあり方が、緊急時には露呈してしまうのです。

社員が大切、お客様の喜びが第一と言いながら、結局は私にとって利益の手段に過ぎませんでした。

利益のためのお客様、利益のための社員という順番なので、平時には誤魔化せても緊急時にはお客様も社員も見えなくなり、それが事故につながったのです。

「何のために経営をするのか」という経営のあり方を、きちんと定めて肝に銘じておかなければやり方だけでは会社は良くならないのです。

これらのいくつもの大きな失敗を経験してようやく最近は、「社員が輝きそして地域を照らせる会社」として発展していくというあり方を定めることができました。

このあり方を理念として第一に考え、経営の取り組みを進められるようになりました。


まとめ

利益はあくまでも結果にすぎません。

経営の目的は社会にどのように貢献できるかという、まさに会社は公器であるという考え方が理解できるようになってきました。

経営のあり方とやり方の両方が揃った時に、会社は健全な成長をしていくとようやく心から理解できるようになりました。

湯澤 剛
湯澤 剛
大学卒業後、1987年キリンビール社に入社。国内ビール営業、ニューヨーク留学、海外事業担当を経て、1999年飲食店チェーン経営者であった実父の急逝に伴い事業を承継。年商20億、負債40億の会社をボロボロになりながら16年かけて再生、負債も全額返済。現在は、飲食店経営と並行して中小企業経営者向けの講演を全国で行い、コーチングを活用した経営者向け個別相談も実施している。趣味・特技:空手初段

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