人間の心理「二分法的思考」と「アンカリング」には注意
前回は人間の心理の「返報性」を紹介したので、今回は「二分法的思考」と「アンカリング」の一面を紹介をします。
「二分法的思考」とはものごとを「白・黒」あるいは「いる・いらない」のように二者択一のどちらかを選択しようとする思考で、「アンカリング」は最初の数字に思考が留められてしまう状態です。
「返報性」は活用しようでしたが、今回は注意しようです。
「二分法的思考」「アンカリング」はどこに?
先ずは、前回の「返報性」と同じ交渉場面で、「二分法的思考」「アンカリング」がどこに存在しているか考えてみてください。
私 :最初に、この商品の概要を説明します
相手:その前に見積もりから30%値引きしてくれ
私 :(エッいきなり?)それは難しいですよ
相手:なんだ出来ないのか、じゃ20%で
私 :(10%は下がったか、う~んそれでもな…)
相手:しかたない、それでは間をとって15%でお願いするよ
私 :(ホッ、落としどころかな)承知しました!
数字に気を付けよう
相手の最初の『その前に見積もりから30%値引きしてくれ』が、「二分法的思考」への誘導と「アンカリング」になっています。
そして、この発言で私は、値引き前提の思考に陥ってしまい、最後の『承知しました!』まで続いています。
どこがポイントだったのでしょうか。
唐突に値引きを要求された事も一因ではありますが、単純に『値引きをしてくれ』だけなら『いやいや値引きは…』という具合に「二分法的思考」に陥る可能性はもっと小さいものでした。
ところが、今回は30%の値引きという具合に、具体的な数字で要求されています。
つまり「アンカリング」発動です。
この「アンカリング」、特に数字の威力は大きく、値引く・値引かないという、本質的な内容に注意が行かずに30%という数字に思考が強く支配されてしまい、「二分法的思考」の値引くが前提になってしまっています。
結果として、私の頭の中は30%をいかに小さくするかに支配されてしまっています。
対応方法
「二分法的思考」
- 選択肢が限定されているような問いには、相手に限定の理由を質問する
- 目の前の問いだけではなく、話の全体を意識する(多面的な視野を持つ)
- 一旦、別な話に転換する
「アンカリング」
- 相手の要求や質問に数字が含まれている場合は、数字の根拠を相手に質問する
- 数字が含まれるような事象(ここでは値引き率)は、自分たちの許容範囲と条件を事前に確認しておく
「共通」
- この場での、自分たちの目的は何かを事前に確認しておく
これは、社内の会議でも、取引先との交渉の場でも、最重要な事前把握です。
まとめ
「二分法的思考」や「アンカリング」という心理思考の存在を知っておくだけでもメリットはありますが、さらに大事なのは目的を意識しておく事です。
特に組織をマネジメントするリーダーは、常に目的をメンバーと共有することが大事になります。