
キャリアチェンジを考える「きっかけ」とは?
定年が60歳から65歳へ、そしていずれは70歳へ。
そして年金受給の年齢が65歳から70歳へ後倒しされるのも時間の問題かも知れません。
そんな環境下では勤務先だけではなく、携わる職業自体も変更せざるを得ない時代になっていくと予想されます。
そこで今回は、私自身がキャリアチェンジを考えるきっかけとなった出来事を「キーワード」で振り返ってみます。
【キーワード1:「逃避」「憧れ」】
新卒で入社した外資系IT企業で経理・経営企画の仕事に就いた私は、入社後3年間で社会人としての最初の「洗礼」を受けました。
持っていた少しの自負もプライドも打ち砕かれ、上司からは「米国親会社のMBA保持者である仕事相手」と丁々発止に仕事ができるように、英語でのコミュニケーション力と論理的であることを徹底的に叩き込まれました。
毎晩午前様で週末土日も無いような激務から、とにかく私は「逃避」したかったのです。
会社どっぷりの生活から逃れ、広い視野で自分の力を高めたいと思い始めました。
今になって振り返ると、MBA保持者に対して畏敬の念と「憧れ」を抱いていたのかも知れません。
【キーワード2:「矛盾」「夢を追う」】
その直後、地方の子会社出向の社命を喜んで受入れ、そこで始めた資格取得の勉強は、3年経過の道半ばで東京へ呼び戻されて一時的には中断します。
一方、本社で私を待ち受けていたのは更なる激務でした。
会社が四半期業績至上主義の典型的なアメリカ企業に変貌していくにつれて、業界内競争だけはなく社内のポジション争いも激しくなっていきました。
頑張れば成果も出て昇格・昇給という達成感は得られるものの、乳飲み子の顔を見る暇さえ取れず、個人の生活は大いに犠牲を強いられました。
そんな自分の状況に大きな「矛盾」を感じ、自分は何のためにここで働いているのか?とよく自問しました。
既に合格を手にしていた中小企業診断士の資格を武器に、コンサルティング会社への転職という選択が頭をよぎりましたが、経験に乏しく時期尚早と断念しました。
一方、このままでは得るものと失うもののギャップが大き過ぎる。
そう感じた私は、そもそもこの外資系企業に入社しようと考えた、ほんのちいさな動機、夢を思い出していました。
「外国で、アメリカで働いてみたい!」これは非現実的なことなのだろうか?
既に入社20年が経過していました。
【キーワード3:「場を変える」「挑戦」】
働く「場を変える」ことを決心した私は、何とか海外のポジションを見つけ、家族を連れて渡航しました。
それは米国企業で培った自分の経験やスキルへの「挑戦」でした。
「え、20年勤めた会社を辞めるって?競合企業から年収2倍でヘッドハンティングされたのか?」
「いやいや、移住して海外で仕事をすることにしたんだ!」
上司や同僚からは奇異な目で見られたことは感じつつも、私にはそれ以外の選択はないと感じていたのです。
今ここで挑戦しないと一生後悔する、そんな思いでした。
【キーワード4:「挫折」「地固め」】
しかし現実はそんなに甘いものではありませんでした。
海外で働く、特に外国人というマイノリティとして現地企業で職を得る、そして働き続けるということは並大抵のことではありませんでした。
また自分の夢やキャリアだけを考えて行動してきた自分勝手さにもやっと気付くことになりました。
帯同してきた子供たちの今後の人生のことを熟慮し、日本へ帰国することしました。
既に49歳になっていた私は、これは勇気ある撤退だと自らを鼓舞し、日本での初めての職探しは早々に転職先が決まりました。
しかし凱旋のように思い上がった気持ちでの会社選びに失敗したのです。
転職先企業から入社2ヶ月程で退職勧奨を受け、人生で初めての「挫折」を味わいました。
その直後に、私はその後の人生を大きく左右することになるコーチングに出会うのですが、当時の私はとにかく溺れる者は藁をも掴む心境。
プロコーチからセッションを受けることで何とか難局を乗り越えることが出来たのでした。
日本へ帰ってきて先ずは「地固め」をすることが重要だと痛感しました。
【キーワード5:「恩返し」「リ・スタート」】
コーチングを受け始めて程なくして別の外資系企業に次の職場を見つけた私は、しばらくはじっくりと腰を落ち着けて仕事をしようと考えていましたが、周りの状況それを許しませんでした。
直属上司が突然辞職したり、グローバル組織の再編成に巻き込まれたりし始めました。
また同じことの繰り返しかな、と感じると再び問いが頭をもたげるようになりました。
自分は何のために働いているのか?誰のために働き続けるのか?
残りの人生はまだまだ長い。20年くらいは働くことになるだろう。
そして過去に一度断念したコンサルティングと、人生のどん底で助けてもらったコーチングを活用して、社会に恩返しする人生を「リ・スタート」することを決心したのです。56歳の夏でした。
〖まとめ・教訓〗
長い人生、誰にでも転機は訪れます。
それを機会と捉えるのか、それに気が付かずに右から左へ見過ごしてしまうのか。
それはその時の心も持ちようやアンテナの立て具合に依るのかも知れないです。
「人は見ようと思うものしか見えない」とよく言われます。
そんな転機に差し掛かっているかも知れない時には、経験豊かな第三者であるメンターがお役に立てるのかも知れません。