任せると丸投げ、どう違う?
研修やコーチングで管理職の皆さんと話していると、「部下に仕事を任せることができない」という悩みを聞くことが多くあります。
私なりに整理すると、2つのタイプに分かれるようです。
一つは、「部下に任せるのは、いまひとつ不安がある、自分でやった方が早い」という方々。
もう一つは、「部下に任せると、部下から“仕事を丸投げしている”と不満を持たれそうで踏み切れない」という方々。
たしかに上司が仕事を丸投げしてくる、という批判もよく聞きます。
今回は、任せるのと丸投げはどう違うのか考えてみました。
任せる効果は大きい
任せることができない、と悩んでいる管理職の皆さんも、「本当は任せたい」し、「任せる効果はわかっている」ということがほとんどです。
一般に部下に任せることの効果には、部下の側では
- 責任感が育つ
- 主体性が身につく
- 仕事の全体像が見えるようになる
- モチベーションが上がる、嬉しい、信頼を感じる
- 達成感が得られる などがあり、
上司の側では、
- 自分の本来の仕事の時間ができる
- 育成やマネジメントの経験ができる などがあります。
任せると丸投げは何が違う
最も大きな違いは動機です。
任せるのは、「チームや部下の成長のために、少し背伸びをするような仕事を部下にやってもらう」
丸投げは、「よくわからない、面倒くさい、きつい、やりたくない、などの理由でとりあえず部下にやらせる」
動機の違いから、具体的には以下のような違いが生まれます。
任せる
- 【指示】指示が明確
- 【権限】裁量や権限が与えられる
- 【進捗】適切なフォローをする
- 【責任】最終的な責任は上司がとる
丸投げ
- 【指示】指示があいまい
- 【権限】権限は不明確
- 【進捗】ほったらかし
- 【責任】責任は部下に押し付ける
会話の違いを見ると
丸投げの職場では、以下のような会話が交わされます。
「よくわからないけど、部長がこれやってほしいと言ってるから、君やっておいてよ」
「そんなこと勝手に君が決めたら困るじゃないか。ちゃんと僕に相談してくれないと」
「へー、そんなことになってるの。とりあえず君に任せたから細かいこといちいち報告してこなくてもいいよ。自分で考えてよ」
「どうしてこんな結果になった。これは君の仕事だから、ちゃんと責任は取ってもらうよ」
任せる職場では、このような会話が聞こえてきます。
「この仕事は◯◯のためにぜひ実現したいんだ。×月×日を目標にここまでを達成してほしいと思っている」
「あなたに任せる予算の権限は、○○円までです。その範囲ならスピード重視で進めてください」
「あの仕事はどのように進んでいますか?うまくいってる?いいね!困ったことがあれば教えて」
「仮にうまくいかなくても、この仕事の責任はあなたに任せた僕にあるから、あなたは安心して取り組んでください。もちろん、うまくいくように期待しているよ」
まとめ
指示と権限を明確にし、適切にフォローすることと、責任は上司がとるということ。
その上で、部下にこの仕事を任せる目的をきちんと伝えれば、上手な仕事の任せ方ができるでしょう。
一人前になるためには「仕事を任せられた」という経験が必要です。
良かれと思っても、自分がやることで部下の成長の芽を摘んでいることにならないか?について、上司としては考えておく必要がありますね。