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経験を次の機会に活かし学習効果を高める「振り返り」(1)

業務の品質や生産性を高めたり、より早く目標を達成するためには、折に触れて「振り返り」の機会を持つことが重要です。

この「振り返り」の良し悪しによって、その後の成果に大きな違いが生まれると言われていますが皆さんはどの様にしていますか?

今回は、私が携わっているシステム開発や、新規事業開発の領域で活用が進むアジャイル開発や、スクラムで使われている「振り返り」の手法「KPT」のフレームワークをご紹介します。


「振り返り」の重要性

近年ますます活用が進むアジャイル開発やスクラムは、実際のユーザーやマーケットからのフィードバックを重視する「経験主義フレームワーク」と呼ばれています。

具体的には、1〜2週間といった短期間の開発作業を反復的に行い、出来上がった成果を漸進的に積み上げていきます。

そのため1〜2週間のサイクルでの「振り返り」(レトロスペクティブ)は必須イベントの一つとされています。

変化が早いからこそ日々の仕事を通じて学習し、改善を促進するために「振り返り」を一連のプロセスの中に組み込んでいるのです。

この「反復的、漸進的に目的に近づく」というところは、コーチングや1on1と共通ですね。

経験学習モデルでも、①まず具体的な経験をし、②その内容を振り返り、③そこから得られた教訓を抽象的な仮説や概念に落とし込み、④それを新たな状況に適用することによって人は学習する、と言われています。


KPTとは

KPTは、「Keep(継続)」「Problem(問題点)」「Try(挑戦)」の頭文字を取った言葉で、日本語では「ケプト」と読まれます。

何かについて「振り返り」を行なったり、フィードバックを得たい時に、この3つの観点から思考を整理する方法を「KPT法」と呼びます。

3つの観点は、それぞれ「うまくいっているので継続すべきこと(=Keep)」「改善すべき問題(=Problem)」「今後取り組むべきこと(Try)」を意味します。

「うまくいっているポイント」と「うまくいかないポイント」を整理したうえで、「求められる改善策」を導くというシンプルな思考法ですから、開発プロジェクトだけではなく、日々の振り返り、コーチングや1on1でもそのまますぐに活用できるのです。


KPTのメリット

今回は、コーチングや1on1で使用した場合のメリットについて説明します。

メリット1

課題を客観的に整理できる KPT法では、「振り返り」の内容を頭で考えるだけではなく文字で書き出すので、課題を可視化できるというメリットがあります。その際、「Problem」以外に「Keep」と「Try」も書き出すため、良くなかった点を挙げるだけの反省とは違い、良かったことやチャレンジすることも考えアウトプットすることにより、現在の状況全体を客観的に整理することができます。

メリット2

「Problem」に向き合える KPT法では課題や問題点を頭で考えるだけでなく、また人に対して述べるのではなくて表に書き込むので、課題が自分や相手から一旦離れて客観的に「vs Problem」という構図で向き合える様になります。さらに、「まずは書き出してみて、それからブラッシュアップしていく」というのがKPT法のスタイルなので、2人で目の前の「Problem」に向かって、同じ方向を見て思考を深めることができます。

メリット3

前向きに反省ができる「振り返り」というとなんだか「反省」になってしまい、自分の失敗や良くない点ばかりに目が向きがちで、どうしてもネガティブな気持ちになってしまう人も少なくありません。しかし、KPT法では、問題を客観的に見られるだけでなく、最初に「Keep」を書き出すため、ポジティブな気持ちで振り返りができます。


KPTの具体的なやり方

  1. KPTのフォーマットを準備する ホワイトボードまたは紙を用意して、左上にKeep、左下にProblem、右にTryのエリアを作ります。ブログの画像を参考にしてください。
  2. 「Keep」の欄にできたこと、成果が出ていて継続することを記載する。
  3. 「Problem」の欄に課題や問題点を記載する ここでは細かなことであっても気にせず、ブレストのような形で思いついたものをどんどん書き出していくことがポイントです。
  4. 「Try」の欄に挑戦したいことを具体的に記載する Keep・Problemの「振り返り」、対話を通して明らかになった真因に対して、具体的にどういったアクションを取るのかをTryとして書き出します。
  5. 3つのセクションの記載内容を整理する 3つのセクションに書き出したものを再考して整理し、表を完成させます。「Tryの内容は本質的に改善につながるアクションかどうか」といった視点を持って、「振り返り」を行います。
  6. それぞれのアクションを実行する アクションを実行しなくては、業務やプロジェクトの改善は実現しません。 7 KPT法でふたたび振り返る KPTは定期的かつ、短期間で繰り返し行うほど高い効果を発揮します。


まとめ

いかがでしたか?

今回ご紹介した「KPT 法」は非常にシンプルな思考法ですから、日々の振り返りのためのセルフコーチングや、部下との1on1でもそのまますぐに活用できそうではないですか?

前回のブログ(https://www.bizmentor.jp/blog/221221a)も参考にして、ぜひ実践して頂きたいと思います。

次回は、「KPT 法」を実践、継続する上での注意するべきポイントや、チームでの活用についてお伝えいたします。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

田中 剛
田中 剛
1987年、大手メーカー系商社に入社。システムエンジニア、プロジェクトマネージャーとして主に金融業界を担当。数々のプロジェクトを手がけ4度の社長賞受賞。一方で、失敗プロジェクトではチームの崩壊、パートナー企業の離反などに直面、挫折を味わい、コミュニケーションの重要性を痛感。その後、大手顧客向けI Tシステムやサービスの企画・提案を担当。 2004年、世界初の実装技術で特許を取得し、販売実績5万本を超えるヒット商品を開発。また、クラウドサービスなどの企画・開発や、新規事業の立ち上げ、マーケティング施策の企画・実行など、新たな取り組みを数多く手がけた。マネジメントでは中期経営計画策定と組織運営、赤字事業の立て直し、コロナ禍での売上拡大に奔走。 現在は、価値観や強み、ありたい姿を起点とした、新規事業開発、I T人材の育成、リーダーシップ開発、組織開発の研究と実践に取り組んでいる。

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