鳥の目、虫の目、魚の目、コウモリの目
経営をしている中では、逆境といえる状況や出来事はどうしても避けられないと思っています。
これまでの20数年の経営者人生でも、何度も厳しい場面に向き合うことになりました。
その時に注意しなくてはならないのは、自分の視野が狭くなることです。
心理的に追いつめられると、状況や出来事に対して特定の見方しかできなくなり、そのことが更に自分を追い詰めていくのです。
大事なことは、モノの見方を意識的に多面的にすることです。
よく言われることですが、鳥の目、虫の目、魚の目、コウモリの目といった色々な目で状況や出来事に 向き合っていくことが効果的です。
鳥の目で見る
追いつめられているときは、目の前の事しか見ることができなくなり、問題を過度に大きく捉えがちになります。
一つの手段が行き詰っただけで、すべてが終わったように感じることもあります。
そんな時に有効なのが鳥の目です。
大空を飛ぶ鳥の目のように物事を俯瞰的、大局的に捉え直すことで新たな手が見えてくることがあります。
現場で発生する困難に影響されて、部分最適な意思決定をしてしまうことはよく起こることです。
そんな時に、鳥の目で「自分は一体何のために経営をしているか?」と大局的に捉え直すことで、本当に大事なことを見失うことなく意思決定ができます。
自社の経営理念に照らして状況や出来事への対応を検討することも大切です。
コロナ禍において売上が減少する中で、目先の利益確保のために人員を削減した会社は、現在は極度の人員不足に苦しんでいます。
目の前のことに追われながらも、「何のために」という大局的な視点をもつことが必要です。
虫の目で見る
その一方で、現場で緊急問題が発生しているのに、根本原因の探求などに時間を掛けていては状況は悪化するばかりです。まずは具体的に行動することが大事になります。
今、何をすべきかを明確にして、目の前のことに集中して取り組んでいくことです。
コロナの状況においても、まず現場で自分たちにできることに集中し、足元をしっかり見ていく、いわば虫の目が必要です。
コロナの時も感染者数の推移や治療薬の開発状況に一喜一憂するのではなく、自分たちにできること、コントロールできることに集中していくことが大事です。
鳥の目で俯瞰的に全体を把握し状況を大局的に捉える一方で、現場では虫の目で見て地に足をつけ、目の前のことに取り組んでいく、バランスの取れた視点の持ち方が理想的です。
魚の目で見る
もう一つの視点として魚の目があります。これは流れを読む、いわば時間を考える視点です。
時流を読んで、時間を軸にして視点を変えるのです。
例えば現在の苦しい状況から、未来へと視点をずらしていくことで、モノの見方が変わってきます。
コロナという降って湧いたような災難の中で、10年後をイメージしてみる。
10年という時間軸で考えた時に、このコロナという災難の中に、将来の自社の成長の種になることはないかと考えるのです。
私たちの会社の例では、コロナで追いつめられた時に、長年検討してきた脱居酒屋業態である定食屋の開発に踏み出すことができました。
コロナで追いつめられていたからこそ、10年後をイメージしたチャレンジに踏み出すことができたのです。
時間の流れを意識し、魚の目で状況を見た時に、自分にとって貴重な機会が見てくることもあるのです。
コウモリの目で見る
コウモリの目で見るとは逆さまから物事をみるということ。意識して相手の視点でモノを見る事の例えです。
当然ですが、人はどうしても自分視点でモノを捉えがちです。
特に追いつめられている時には、自分の周りの人がどう考えて、 何を感じているかなどにまで気が回りません。
コロナで売上が急減した時に、私は会社をどう維持していくかで頭が一杯になり、不安を感じ得ている社員たちへのフォローが十分にできず、幾つかのトラブルにつながりました。
自分が追いつめられている時にこそ、ウモリの目で相手がどう思ってるかを少しでも考えることが有効です。
まとめ
逆境において経営者が注意しなくてはならないのは、視野狭窄です。
視野が狭く成り、それにより更に心理的に追いつめられることです。
そんな時に有効なのが、鳥、虫、魚、コウモリの4つの目を意識的に使い分けて、自分で物事の見方を多面的にすること。
ただし、それは自分一人で行うことが難しい時もあります。
特に気持ちが追いつめられているときほど、難しくなります。
そんな時こそコーチを活用して、多面的な見方をサポートしてもらってはいがでしょうか?