折れない心のつくり方 経営者のレジリエンス
レジリエンスという言葉を耳にすることが増えています。
レジリエンスについては「困難で脅威的な状況にも関わらず、上手く適応する過程・能力・結果」という定義が幅広く用いられています。
経営者であれば皆実感していますが、経営は正に「山あり谷あり」。
順調に進んでいると思っていても、「まさか」の事態が突然起こることもあるのです。
それ故に経営者にとって大事なのは、困難で脅威的な状況に上手く対応する力、レジリエンスなのです。
黒が白く見える
困難な状況に陥った時にレジリエンスを発揮できないと、気持ちが追いつめられて視野が狭くなってしまいます。
いわゆる視野狭窄の状態になると、通常ではありえないような意思決定をしてしまうことがあります。
目の前に生じている問題に意識が集中して、その苦しさから逃げるために、黒いものを白いと判断して 大きな間違いを起こすことにつながります。
大企業で時々発生する不祥事は、悪意を持って行ったものよりも、困難な状況で心理的に追いつめられて、視野狭窄に陥った末に判断を誤ってしまったケースが多いのではないのでしょうか。
私自身も中小企業経営者として、何度も黒が白く見える感覚を経験しています。
売上の急な減少に動揺して、無理な販売促進キャンペーンを行い、店舗スタッフに大きな負担をかけたり、資金繰りに苦しんでいた時に極端な経費削減をして、事故につながってしまったこともあります。
心理的に追いつめられて視野が狭くなり、通常ではありえない行動をしてしまったのです。
また日常的には、些細な問題に動揺して、社員に対して自分の感情をぶつけ、必要以上にきつく当たってしまい、社員のやる気を削ぎ、極端な例では退職に追い込んでしまったこともあります。
あとから考えてみれば、「なぜあんな意思決定や行動をしたんだろう?」と首をかしげることも沢山あります。
レジリエンスの強化
レジリエンスが弱いと、困難な状況や出来事に遭遇した時に、心理的に追い込まれ、不適切な意思決定や行動をしがちになります。
経営者の姿勢が経営に大きな影響を及ぼす中小企業にとっては、時に致命的な過ちになることもあります。
その意味ではレジリエンスの強化は、経営者にとっての最重要課題であると言っても過言ではないのです。
どのような素晴らしい経営戦略も経営者の心が弱っていては実行できませんし、経営者が精神的に不安定になれば、組織も弱体化していきます。
中小企業においては経営者の心の在り方が、経営の先行きを決めるのです。
ではそのように重要なレジリエンスをどのように高めていけば良いでしょうか?
レジリエンスを高めるための取り組み
レジリエンスを高めて折れない心を創るために、私が意識しているのは、次の2点です。
第一は、自分の認知を変えていくこと。
経営をしていく中では、残念ながら様々な問題やトラブルは避けられないこともあります。
それは経営に限らず、人生でも同じではないでしょうか。
経営や人生において発生する出来事や状況を、すべてコントロールすることはできないのです。
その出来事や状況を受けて、自分が怒ったり不安になったり悲しくなったりする感情そのものも コントロールは難しいのです。
私たちにコントロールできるのは、出来事・状況と感情の間にある認知・思考です。
その出来事や状況を自分がどのように捉えるか、解釈するかは 自分でコントロールできます。
出来事や状況に対する自分の受けとめ方を、自分で意識して変えていくことがレジリエンスを強化するために大切です。
第二には、社会的なネットワーク創りです。
何か問題があった時に相談できる、話を聞いてもらえる人がいるということがとても重要です。
経営者はどうしても自分一人で問題を抱えがちです。
一人で悩んでいるとどうしても視野が狭くなり、独り善がりの判断をしがちになります。
そんな時に、話のできる友人や仲間がいれば気持ちが楽になり、しっかりと現実に向き合う心の余裕も出てきます。
苦しい時に話ができる、相談できる、支えてくれる人がいることが レジリエンスを高めることに繋がります。
まとめ
経営責任のすべてを背負う中小企業経営者にとって、折れない心の源になるレジリエンスは、最も重要な資質と思います。
そのレジリエンスを高めるためには、状況や出来事に対する自分の受けとめ方をコントロールすること、苦しい時や追いつめられた時に話ができる、相談できる相手をもつことが有効です。
そして経営のコーチはその両方に貢献できる存在です。