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「自信を持つ」と「驕りを捨てる」

様々な方とのメンタリング・セッションを通じて、私は多くのことを日々気付かせて頂いています。

このシリーズでは、その中でお聞きした「心に留めたい一言」をご紹介します。なおセッション内容には「守秘義務」がありますので、主旨が伝わる範囲で編集・創作しています。


店長から本社へ異動

本社へ異動になり、これまでと担当業務が大きく変わったM子さん。

この移行をスムーズに実施していくために、というテーマでM子さんの上席役員からメンタリング・セッションの依頼があったのが約一ヶ月前。

M子さんとのセッションはいつも通り、「最近、お仕事の方の進捗はいかがですか?」で始まった。

「そうですね、異動直後のイライラは大分軽減しました。少し『諦める』ことが出来るようになったからかも知れません」

表情に晴れやかさは無かった。

「『諦める』とおっしゃいますと?」

そう水を向けるとM子さんは重い口を開いた。

「本社の仕事は管理なんです。私自身が成果を出すのではない。カッコよく言うと環境作りやお膳立て。店長を長くやって来た私にとっては、現場はそんな甘いもんじゃない。お客様へ臨機応変に対応する必要があるので、本社の指示なんていちいち聞いていられない。」

少し口をつぐんで、そして再びこう続けた。

「しかし、今度は指示を出す立場。動かない現場、なかなか成果が出ない個店に付き合っているのは、とってももどかしい。私が乗り込んでいって、その店に合った店舗スタイルを指示した方が速い。」

天を仰いだM子さんに「これからどうして行きますか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「この会社でやっていく自信が無くなってきましたね。」


(メンターの視点)

個店勤務時代、部下を半ば強引に引っ張ることで業績を上げてきたM子さん。

成果を出せる手腕を買われての本社異動だったが、内情は彼女の行き過ぎた管理方法への注意喚起の意図もあった。M子さん自身も反省して異動を受け入れたのだ。

能力も高く、成果への拘りが強いことは会社としては望ましいものの、部下たちからの不平不満を会社としてやり過ごすことは出来ず、見るに見かねた役員が本社へ異動させたのだった。


少しずつ成果も出始めて……

メンタリング・セッションも4回目くらいになると慣れも出てきたのだろうか。

「M子さん、今日は心なしか表情が明るいですね!」

「そうなんですよ、私が役員会へ提案、採択され実行した個店活性化プログラムでやっと成果が出始めたんです。だからさんざん言ってたんですよ、早く始めた方が良いって!うちの上司は本当に仕事がスローなんです。」

「それは良かったですね!」

M子さんはこう続ける。

「はい。そして少しずつですが『本社』の働き方が分かってきました。」

「なるほど。それはどんな『働き方』なんですか?」

意気揚々と持論を展開するM子さん。

「余り性急に結果を出そうとしないことですね。大人しくしている方が良いんです、特に私のような人間は!会社ってこんなもんなんだ、と初めて分かりました。」

私はM子の気持ちを訊いた。

「そういう働き方をご自身はどう感じているのですか?」

M子さんは暫く口を閉ざし、想いを巡らしているようだった。


(メンターの視点)

「M子さんが本社で期待されている役割って何ですか?」

と、これまでのセッションで何回となく問いかけてきた。

しかし自分自身にとっての成果という視点が強く、他人から自分がどう見えているのかという意識が薄かったようだ。

役員会を動かして導入したプログラムで少しずつ成果が出てきたことで再度自信を取り戻したM子さんだが、その成果が誰によってもたらされているか、という視点が抜け落ちているように感じた。

そして今回の本社異動で会社が自分自身に何を課したのか、再び考えて欲しいと思った。


期待されている役割は?

「この働き方、というか本社でのこの考え方には個人的には納得はしていないです。しかし反省を促すために私を本社へ異動させたことは理解しています。」

大事な局面に来たと思い私は言葉を継ぐ。

「反省を促す異動ですか!他にいかがでしょうか、会社がM子さんに期待していることは?」

「自分の店だけではなく、会社全体が上手く回るような施策や仕組みを作って欲しい、ということでしょうか?」

「そう思われるんですね? それを実現するためには、M子さん自身が心掛けるとすれば、どういうことがありそうですか?」


(メンターの視点)

実務能力も高く、ある分野では成果が出せるM子さん。

もう一段高い視座を持って仕事に取り組んで欲しい、という意図で本社へ異動になったはず。

だが彼女には何かが足りない、直観的に私はそんな感触を持った。私も解を持ち合わせていない。

そこで私は問いを続けた。

M子さん自身で気付き、答えを見付けて欲しかったからだ。


「自信」と「驕り」

「心掛け、ですか?」

暫く口をつぐんだまま考えていた。

そして

「自分で出来ることには限りがある、ってことかな?」

私は「具体的には?」と深掘りを促す。

「個店では自分で自ら動いて成果を出した。成果が出ることで自信に繋がった。本社へ異動になって、最初は全く成果が出ず、むしろマイナスの結果しか出なかった。会社を辞めようと思った。そして働き方を変えることに気付いた。車の運転に喩えるとギアをトップから2速に落とす感じ。進みがスローになった。だけど会社は止まった訳ではない。私の個店活性化プログラムが実行され、その成果が出つつある。」

ここまで一気に語るM子さん。

「自分に自信が無いと仕事が進められない。しかし自信を持ち続けようとすると驕りとの区別がつかなくなる。」

「個店勤務時代のM子さんを、今のM子さんから見るとどう見えますか?」

「思い上がった見方や態度だったのかも知れません。だけど….」

「だけど、何か?」

「はい、だけど自信と驕りの線引きは意外に難しいような気がします。」


まとめ

今回のセッションで得られた教訓

  • 自分に自信が無いと物事は実行できない。しかし、自信が驕りになってしまい、周りが見えなくなってしまうこともある。
  • 自信と驕りの線引きは難しい。しかし、謙虚さや身の周りへの感謝の気持ちを、常に振り返ることで気が付けるのではないか?
  • 私が未だ30代終りの頃、上司の上司からこんな助言を頂いたことがある。「職場で、周りの人間がバカに見え始めたら要注意だ。」その時は実感が無かったが、ひょっとしたら戒めの言葉だったのかも知れない。

どんな素晴らしい成果を上げようとも、それは自分の力量だけで成し遂げたものではない。

周りの人たちから自分はどう見えているか、そして、そういう仲間たちに感謝の気持ちを持って接しているか?

M子さんとのセッションを通じて、改めて気が付きました。




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砂村 義雄
砂村 義雄
上智大学経済学部卒。外資系大手企業などで財務経理本部長などを歴任し独立。 経営者を対象としたエグゼクティブ・コーチング、及び企業向けにコーチングとコンサルティングを掛け合わせた「協業型コンサルティング」を提供。また「1on1ミーティング」導入支援や管理職研修を通じて、組織開発・企業風土改革のプロジェクトを展開中。名古屋商科大学大学院 経営学修士(MBA)取得

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